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[標本番号:No.127   採集日:2007/03/02   採集地:埼玉県、川口市]
[和名:ヒメスギゴケ   学名:Pogonatum neesii]
 
2007年3月10日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 川口市の密蔵院脇では、スギゴケの仲間が耕地の露地斜面を覆っている(a, b)。これまで何度も見ているのだが、乾燥して巻縮し(c, f)、朔は円筒状で帽が白い毛に覆われているので(d, o)、ニワスギゴケ属 Pogonatum だろうとは思っていたが、これまでは確認していなかった。
 茎は高さ3〜5cm、枝分かれはほとんどみられないが、地下では仮根が絡み合っていて、基部で枝分かれしているようにみえる(e, f)。葉は透明卵形の鞘部をもち、そこから披針形に伸び、先端は尖る(g)。中肋は葉の先端に達している。葉の先端から中央部の縁と背面には鋭い歯がある(h, i)。葉の基部から鞘の部分には歯はみられない(j)。
 葉身細胞は角の丸い多角形で、長径8〜15μm(k)、鞘部では大きめの矩形となっている。葉の横断面を切り出すと、腹部一面に薄板が覆っている(l)。薄板の頂端細胞の先端は弱い凹状〜平らであり、複数の細胞には分岐していない(m)。茎の横断面をみると、表皮は厚壁の小さな細胞からなっり、中心束ははっきりしない(n)。
 朔の蓋は円錐形に尖り(o)、朔歯は32枚(p)。念のために朔柄の断面(q)、胞子(r)を撮影した。コスギゴケ Pogonatum inflexum としてよさそうだ。コスギゴケであると確認したのは、先月奥多摩で採取した標本に引き続いて二度目となる(覚書2007.2.8)。

[修正と補足:2007.03.11]
 本蘚類をヒメスギゴケと修正する。昨日、識者の方から、「ヒメスギゴケ Pogonatum neesii (= P. akitense) の可能性はなかったんでしょうか」というご指摘をいただいた。そこで、先にコスギゴケと同定した標本(覚書2007.2.8)と比較してみた。あらためて両者の乾燥標本をとりだして、(1)乾燥時の縮みかた、(2)薄板頂端を腹面からみたときのようす、の2点に限って比べてみた。
 

 
 
(1)
(1)
(2)
(2)
(1')
(1')
(2')
(2')
 というのは、図鑑によればヒメスギゴケは「コスギゴケに非常に近いが、葉は乾いてもあまり縮れず、薄板の端細胞は上から見て、ほぼ円形」とあるからだ。写真の(1), (2)は標本番号No.91のコスギゴケ、(3), (4)はここで取りあげてきた標本番号127である。
 両者を比較してみると、確かに葉の巻縮具合はかなり違う。また、薄板の端細胞の様子も違うようだ。この標本はヒメスギゴケ Pogonatum neesii とする方が妥当と思われる。