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[標本番号:No.172   採集日:2007/04/05   採集地:埼玉県、飯能市]
[和名:キヨスミイトゴケ   学名:Barbella flagellifera]
 
2007年4月11日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 埼玉県の正丸峠というと、ハイカーには人気のある場所だ。国道は正丸トンネルでその下を通り、旧道が峠近くを通っている。先日、旧道を通って峠近くを走っていると、沢スジの樹木から厚く長いコケのカーテンがいくつも垂れ下がっていた。
 車を停めて沢に降りてみると、キヨスミイトゴケらしきコケが一面にみごとな緑のカーテンを作っていた(a, b)。垂れ下がった部分の長さは80〜120cmほどあり、自重のせいか多量のコケの束が千切れて沢に落ちていた。あまりにみごとなので一部を持ち帰った。
 あまりに長く伸びて密集しているので(c)、キヨスミイトゴケ以外の可能性もありうると思い、茎葉と枝葉の形、葉の先の芒の部分、葉身細胞のサイズ、乳頭の位置と数、葉の翼部の細胞などをチェックした。キヨスミイトゴケ Barbella flagellifera に間違いなさそうだ。

 キヨスミイトゴケは昨年12月、今年の2月に観察しているので、今日は観察結果の数値や詳細などにはあまり触れずに、写真を主体に取りあげることにした(覚書2006.12.27同2007.2.24)。
 基物に密着している部分の茎は、垂れ下がった枝に比較してずっと太く、茎も葉も茶褐色になっている(d, f)。長く伸びる枝を水没させると、枝に密着していた葉が少し離れた(e)。茎葉は枝葉に比較して大きく幅も広くて、葉先の芒が短い(f, h)。それに対して枝葉は長くて透明な芒をもっている(g〜j)。茎葉と枝葉を並べて撮影した(h)。枝葉の縁には微細な歯があり(k)、翼部の細胞は他の部分とは大きく違った形に分化している(l)。
 茎葉の横断面を切り出してみた。基部付近では葉身細胞に乳頭はほとんどなく、中肋は薄くて幅広い(m)。茎葉の中央部付近では、わずかに中肋が残り、葉身細胞には乳頭がみられる(n)。さらに先の方の葉の断面には中肋はなく、腹側にも背側にも乳頭がある(o)。葉の縦断面をみると、乳頭は葉身細胞の中央付近についている(p)。茎の断面(q)と枝の断面(r)を同一倍率で並べてみた。茎の表皮部分には何層もの厚膜の細胞がみられるが、枝ではやや違う。