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[標本番号:No.181   採集日:2007/04/07   採集地:栃木県、日光市]
[和名:カラヤスデゴケ   学名:Frullania muscicola]
 
2007年4月16日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 標高860〜900mの渓谷の河原を歩いていると、赤褐色〜茶褐色の小さな苔類がついた落枝がやたらに目立った。一見したところヤスデゴケ科の苔類のように思った。
 落枝の樹皮をはい、不規則に羽状に分枝している。茎の長さは1〜4cm、枝は0.5〜1.5cm、幅は葉を含めても1mm前後しかない(b)。現地でみたものは乾燥していたが、湿らすと倒瓦状に丸い葉がついている様子がよく分かった(c)。
 濡らすと基物から剥がし易くなったので、腹面を上に水没させて実体鏡で(d)、ついで顕微鏡でみた(e)。葉の背片は卵形で全縁(f)、短いキールで腹片につながり、腹片はヘルメット形で嘴はもっていない。複葉は茎幅の3倍ほどあり、先端が二裂し縁には小さな歯がある(d, e)。
 背片の葉身細胞は、葉縁では15〜20μm(g)、葉の中央部で20〜30μm(h)、両者は大きさと形がやや異なるが、いずれも大きなトリゴンをもっている。ヘルメット状の腹片(i)の葉身細胞には葉緑体がほとんど見られず、細胞の大きさも12〜20μmで、背片の葉身細胞よりも小さいが、やはり大きなトリゴンがみられる(j)。

 採集した当初は、アカヤスデゴケかヒメアカヤスデゴケかもしれないと思ったが、観察結果は、カラヤスデゴケ Frullania muscicola を示している。昨年9月にカラヤスデゴケに出会ったときは緑色をしていた(覚書2006.9.15)。このときは油体が明瞭に見えたが、今回の標本では油体ははっきりとはわからなかった。
 カラヤスデゴケについて図鑑類では「緑色〜赤褐色」とか「赤褐色−黒褐色−緑褐色」と記されているが、一度緑色以外のものに出会いたいと思っていた。はからずも赤褐色の個体に出会うことができたわけだ。なお、この標本は葉がかなり崩れていて、観察がやりにくかった。