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[標本番号:No.213   採集日:2007/05/03   採集地:栃木県、日光市]
[和名:アオギヌゴケ属   学名:Brachythecium sp.]
 
2007年6月11日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先月3日鬼怒川温泉の標高400m近辺で採取したコケを観察した。半日陰地の腐木や転石を覆っていたもので、柔らかい感じでツヤがある(a, b)。乾湿による葉の変化はあまりない(c, d)。地表を這う茎は長さ8cmに及ぶものもあり、不規則に枝を出す(c)。枝は長さ5〜8mm、茎からやや斜上に立ち上がり、覆瓦状に葉をつける。
 茎葉は長さ1.2〜1.5mm、広い卵形〜三角形の基部から急に細くなり、ほぼ全縁で、中肋が1/2〜3/4あたりまで達する(e)。枝葉は楕円状披針形〜卵状披針形で、ほぼ全縁〜微細な歯をつけ(h)、中肋が2/3〜3/4あたりまで達する(f, g)。中肋の先端に突起や歯などはない。
 葉身細胞は、長楕円形〜線形で、翼部では方形の細胞となる。中央部をみると、茎葉では長さ35〜55μm(i)、枝葉では長さ50〜75μm(j)、幅はいずれも4〜6μm。葉身細胞の表面は平滑で、微細な突起などは観察できない。茎葉は泥汚れや破損したものが多く、横断面は切り出せなかったが、枝葉の横断面をみると、中肋にステライドはみられず、ガイドセルと大型の細胞からなる(k)。枝の断面をみると、表皮細胞は厚壁で小さく、中心束がみられる(l)。

 枝ぶり、葉の形、葉身細胞の形などから、ヤナギゴケ科かアオギヌゴケ科だろうか。ヤナギゴケ科にしては翼部の区画があまり明瞭ではない。アオギヌゴケ科であるとすれば、どの属になるのだろうか。検索表をたどると、最も可能性が高いと思われるのはアオギヌゴケ属と思われる。アオギヌゴケ属をひとつずつ、観察結果と比べてみたが、どれもしっくりとこない。結局、現時点では、種名まではたどり着けなかった。

[修正と補足:2007.06.24]
 多分これは、ハネヒツジゴケ Brachythecium plumosum ではあるまいかと、推測している。何名かの識者の方からも同意見を頂いている。典型的なハネヒツジゴケを観察できたら、それと比較してみようと思っているのだが、まだ採取できていない。もっとも、胞子体をつけていないことを考慮すると、最終的に種名にまでたどり着くことはできないおそれが大きい。
 昨日(2007.6.23)、新宿の科学博物館分館で行われたコケ講座の席で、講師の先生方に意見を伺ったが、Brachythecium sp. ということで、処理しておくのが妥当だろうとのことであった。アオギヌゴケ属 Brachythecium までたどり着けたことで充分と思う。
 なお、標本番号No.186のウチワチョウチンゴケ属 Rhizomnium sp. についても、同様の問題があるので、これも種名まで判明することはなさそうだ。