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[標本番号:No.270   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:サワラゴケ   学名:Neotrichocolea bissetii]
 
2007年7月1日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 富士山の標高1,600mあたりで、タチハイゴケやイワダレゴケに混じって、羽を広げたような大型の苔類が柔らかなマット状に群落をなしていた(a)。溶岩や周辺の腐植土から倒伏したり立ち上がった状態で、ひとつ一つの個体は、長さ8〜20cm、規則的に羽状に分枝する(b)。
 ルーペで見ると、背面は葉の表面が一面に白毛に被われたように見える(c)。腹面をみると、腹片も白毛に被われていて、枝によっては腹片が袋状になっている。腹葉も同じように白毛に被われたようにみえる(d)。毛が邪魔して細かい構造がはっきりしない。
 葉は茎に対して横につき、半円形〜台形で、1/2あたりまで裂け、先は細かく糸状になっている(e)。葉の表面からも無数に毛がでている(f)。腹片はやや小さいが背片と同じように裂け、先が糸状になっている(g)。枝の基部に近い部分では腹片は袋状となり、袋には毛はない(h, i)。複葉があり、これも背側の葉と同じような構造をしている(j)。
 葉身細胞は、多角形〜矩形で、長さ20〜35μm、トリゴンは小さく、各細胞には、楕円形の油体が6〜20数個みられる(k, l)。雄花や雌花はみあたらなかった。カリプトラの構造はいまひとつよく分からなかった。

 どうやら、サワラゴケ Neotrichocolea bissetii らしい。この苔類を観察しているうちに、以前ムクムクゴケとして扱った苔類と同じ種であることがわかった(標本No.265)。すでに、先の標本は再度検討した結果、6月28日にムクムクゴケからサワラゴケに修正してあった。