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[標本番号:No.338   採集日:2007/09/15   採集地:群馬県、嬬恋村]
[和名:ヒメジャゴケ   学名:Conocephalum japonicum]
 
2007年9月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 9月15日は群馬県嬬恋村で行われた菌類の合宿に参加していた。鹿沢高原の標高1,300m付近の小川に沿った、湿った岩壁と腐植土にヒメジャゴケが大きな群落を作っていた(a, b)。弾丸型胞子と樽型胞子や弾糸を観察したかったので、朔をつけた個体を探してみたが、見つからなかった。葉状体は、長さ2〜3cm、幅4〜5mm、何回か二叉状に分岐して這う。
 ルーペで見ると、背面には小判型の黒い部分が随所にある(c)。葉状体の先端付近には円盤形の無性芽を多数つけている(a〜e)。腹面には、紫色の腹鱗片と中肋部にそって仮根の束が見られる(d, e)。腹鱗片は中肋部の左右に各1列、半月形〜半円形で、先端に円形の附属物をもっている(f〜h)。横断面でみると、腹鱗片は一層の細胞からなる(i)。無性芽の付近では、腹鱗片の付属物は円形ではなく、無性芽を包むような形になり、花の萼片を連想させる(e)。
 仮根には有紋型と平滑型の二種がある(j)。葉状体を横断面でみると、組織がよく分化し、表皮層の部分にはアーチ型の気室孔があり、室底には先端が尖った同化糸がみられる(l)。

 ヒメジャゴケを持ち帰って観察したのはほぼ1年ぶりのことになる(標本No.11)。ジャゴケ科は1科1属で、ジャゴケ属 Conocephalum には、ジャゴケとヒメジャゴケの2種が知られ、ともに日本にもあるという。葉状体背面の模様が独特であり、比較的覚えやすい苔類のようだ。葉状体のサイズ、無性芽の有無などをみれば、2種の区別は簡単だと書かれている。