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[標本番号:No.339   採集日:2007/09/15   採集地:群馬県、嬬恋村]
[和名:コバノスナゴケ   学名:Racomitrium barbuloides]
 
2007年10月21日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 群馬県嬬恋村の標高1,450m付近、陽当たりのよい道路脇の岩壁にスナゴケによく似たコケがついていた(a〜c)。茎は、長さは2.5〜4cm、不規則に短い枝を出し、反り返るように葉をつけるが、乾燥すると葉が茎に密着する(d)。同じシモフリゴケ属でも昨日観察したNo.337と比べると、葉先が白さが強く、乾くとゴワゴワした感触である。
 一本の枝からピンセットで葉を落として、スライドグラスの水に落とした(e)。葉は卵状披針形で(f)、長さ2.5〜3mm、葉の基部には縦皺を持った葉もある。カバーグラスをかぶせると、光の反射は消えて見やすくなったが、立体感はなくなった。
 葉頂は透明な芒状になったものや、やや鈍頭気味のもの、微歯をもったものなどがあり、いずれも多くの乳頭に覆われている(g, h)。また、葉の基部の形や、尖端部の形にはかなりの変異がある(f〜h)。同一の枝についた葉であるから、別種の混入は考えられない。
 葉身細胞は、葉の中部では方形〜矩形で、長さ10〜30μm、厚く波形に肥厚した細胞膜をもち、表面には多くの乳頭がみられる(i)。葉の基部付近の葉身細胞は、矩形で、長さ20〜40μm、膜は波形に厚く肥厚するが、表面に乳頭はなく平滑であり、翼部では薄膜でやや大形の茶褐色を帯びた方形の細胞が並ぶ(j)。
 葉の横断面を見ると、縁部はいずれも1層からなり、葉の上部から中部には低い乳頭がみられるが、基部付近では乳頭はあいまいとなる。中肋にはステライドがみられるが、発達は悪い。また、葉先の横断面には顕著な乳頭がみられる。茎の横断面には中心束はない(l)。

 この蘚がシモフリゴケ属であることは間違いなさそうだが、ではどの種なのだろうか。これまで見てきたエゾスナゴケとは別の種に思える。また昨日観察したNo.337とも異なる。観察結果をいくつかの図鑑の検索表にあたってみると、コバノスナゴケ Racomitrium barbuloides とするのが、比較的妥当に思われる。現時点では、コバノスナゴケとしておこう。