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[標本番号:No.407   採集日:2008/03/29   採集地:栃木県、鹿沼市]
[和名:オリーブツボミゴケ   学名:Nardia subclavata]
 
2008年3月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 昨日栃木県鹿沼市粟野の林道を詰めたどん詰まりにある百川渓谷を散策した(alt 380m)。そのおり、道のすぐ脇、湿った土の崖に小さな苔類が密集していた。不透明な暗緑褐色で一部赤色を帯びている(a〜c)。茎は長さ0.8〜1.5cm、わずかに枝分かれする。
 葉は瓦状で離在〜接在し、茎に斜めにつき、広卵形〜心臓形で、全縁。腹片はなく、茎径とほぼ同幅の腹葉がある(d〜f)。腹葉は全縁で、基部からは仮根が密集して出る。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 葉身細胞は丸味を帯びた多角形で、長さ25〜45μm、やや厚壁でトリゴンは大きい(g)。楕円形〜芋虫型で表面が粒状の大きな油体が、各細胞に一つある。腹葉の細胞ではトリゴンがやや小さく、油体は楕円形で、表面が微粒に被われ、各細胞に一つある(h)。
 花被は筒状円錐形でペリギニウムが発達している(c)。卵形の黒い朔をつけた個体がある(i, j)。朔を一つ取りだして(k)、軽く圧を加えると、中から胞子や弾糸がはじき出された(l)。胞子は球形で、径12〜16μm、弾糸は幅4〜6μmの帯が2本、筒径10μmほどの二重螺旋をなす(m)。
 朔壁を観察してみた(n)。朔壁は内外2層からなり(q)、外壁を構成する細胞は、多角形で大きく、それぞれの細胞に1つの油体がある(o)。内壁を構成する細胞は厚壁で小さな矩形をなしている(p)。朔柄の横断面には組織の分化はほとんどみられない(r)。

 持ち帰ってルーペでみて、しまったと思った。分類の厄介なツボミゴケ科 Jungermanniaceae の苔類らしい。しかし、花被も朔もあるので、ていねいに観察して検索表をたどれば何とかなると思い直した。観察結果をもとに、平凡社の図鑑をたどるとアカウロコゴケ属 Nardia に落ちる。
 ついで、種への検索表をたどると、アカウロコゴケ N. assamica ないしオリイブツボミゴケ N. subclavata に落ちる。両者の説明を読むと、葉の透明性、葉身細胞のトリゴンの大きさ、油体の数などが違うようだ。本標本は、葉が不透明で、トリゴンは大きく、ほとんどの細胞に1つの油体がある。したがって、オリイブツボミゴケと判断した。

[修正と補足:2009.10.24]
 標本No.734でN. subclavata の和名を、広く通用している「オリーブツボミゴケ」と表記した。これにあわせて、本標本でも、タイトルの部分だけをオリーブツボミゴケと修正した。
[注] INDEXでは諸般の事情からあえて「オリイブツボミゴケ」としてある!