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[標本番号:No.394   採集日:2008/03/08   採集地:埼玉県、小鹿野町]
[和名:アオシノブゴケ   学名:Thuidium pristocalyx]
 
2008年4月4日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 3月8日に埼玉県小鹿野町にある双子山に登った。その途中、標高800m付近の石灰岩上にシノブゴケ属らしき蘚類が群生していた。持ち帰った標本は約1ヶ月間放置したままとなっていた。乾燥した茎や枝を見ると、毛葉が非常に少ない(b)。水没させてしばらくすると、葉が茎や枝から離れた(c)。あらためて茎の表面をよくみたが毛葉が非常にわずかしかない(d)。
 植物体は数回羽根状に分枝し、全体にほっそりしていて、分枝はかなり不規則である(a)。茎葉は卵形で、長さ1〜1.3mm、先端はわずかに尖り、縁には微細な歯があり、中肋が葉長の2/3あたりまで達する(e)。葉身細胞は不規則な多角形で、長さ10〜20μm、表面に顕著な乳頭があり、乳頭の先は金平糖状に分かれている(f)。
 主枝の枝葉は広卵形で、長さ0.3〜0.4mm、先端は軽く尖り、縁には微細な歯があり、中肋が葉長の2/3〜3/4に達する(g)。支枝の枝はも形や中肋はほぼ同様で、葉の長さが0.1〜0.3mm程度。主枝でも支枝でも、その表面に毛葉はとても少ない(h)。
 茎葉の基部の横断面を切り出してみた(i)。葉基部では金平糖状に分かれた乳頭は少ないが、葉の大部分では、大きな乳頭が顕著である。中肋にはステロイドはない(i)。茎を縦断して縁をみると、わずかに毛葉がみられる(j)。毛葉の腔上にはパピラがある(k)。茎の横断面には、厚膜で小さな表皮細胞があり、弱い中心束が見られる。

 シノブゴケ科 Thuidiaceae の検索表をたどると、シノブゴケ属 Thuidium に落ちる。種への検索表をたどると、アオシノブゴケ T. pristocalyx または、オオアオシノブゴケ T. subglaucinum に落ちる。オオアオシノブゴケは、多くの毛葉がつくという。平凡社の図鑑によれば、両者の決定的な違いは、内雌苞葉の縁に歯があり長毛がない(アオシノブゴケ)か、内雌苞葉の縁に長毛がある(オオアオシノブゴケ)ことだという。
 本標本には朔や造精器、造卵器などをつけた個体がなかった。したがって、形態的な特徴とされる、茎や枝の表面につく毛葉についての記述にしたがって、アオシノブゴケとした。アオシノブゴケを観察したのは、標本No.364に続いて二度目となる。
 そこでも疑問を提起したが、標本No.57を今回も、再検討してみた。乾燥標本を比べてみても、本標本とNo.364は非常に似通っているが、両者とNo.57とはかなり違ってみえる。やはり、No.57はアオシノブゴケではなく、オオアオシノブゴケとするのが妥当だと考えるに至った。