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[標本番号:No.477   採集日:2008/07/19   採集地:岐阜県、高山市]
[和名:ミヤマスギバゴケ   学名:Lepidozia subtransversa]
 
2008年7月24日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 6月19日(土)に安房平(alt1500〜1600m)でダチョウゴケを採取したが、そのすぐ脇にムチゴケ科 Lepidoziaceae らしい苔類がふんわりしたマットを作っていた(a)。茎は倒伏し、長さ4〜8cm、1〜2回羽状に分枝し、葉は倒瓦状に散在し、一部の枝先はやや鞭状に伸びる(b)。
 背側の葉は、離在〜接在といういのだろうか、重なることなく茎に斜めにつき、幅0.5〜0.7mm、長さ0.5〜0.8mm、1/2くらいまで3裂ないし4裂し、裂片は三角形をなす。腹葉は、背側の葉より若干小振りで、1/2あたりまで4裂し、裂片は三角形となる(c〜g)。
 (背側の)葉の三角形をなす裂片の基部の幅は8〜10細胞からなり、腹葉の裂片基部の幅は4〜6細胞からなっている(g)。葉身細胞は丸味を帯びた多角形で、長さ18〜30μm、トリゴンは小さいかほとんどなく、均一サイズの白色の油体が各細胞ごとに10〜18個ある(h, i)。茎や枝の横断面をみても、組織の分化はほとんどない(j)。

 ムチゴケ科スギバゴケ属 Lepidozia の苔類のようだ。保育社図鑑で、属から種への検索表をたどってみた。葉の裂片の基部の細胞数が重要な形質として取り上げられている。それに従うと、本標本では8〜10細胞からなるので、直ちにミヤマスギバゴケ L. subtransversa となる。種についての解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。
 念のために平凡社図鑑にあたると、葉の葉掌部の細胞高さがキーワードとなっている。本標本の葉掌部を構成する細胞は10細胞以上ある。さらに発生環境が亜高山帯ということもあり、平凡社図鑑の検索表からは、ハイスギバゴケ L. reptans とミヤマスギバゴケのいずれかになる。さらに読み進むとハイスギバゴケは排除される。平凡社図鑑にはミヤマスギバゴケの写真はあっても解説はない。なお、雄花や雌花はみつからなかった。