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[標本番号:No.777   採集日:2009/10/10   採集地:秋田県、鹿角市]
[和名:コフサゴケ   学名:Rhytidiadelphus japonicus]
 
2009年11月20日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a〜c) ミズゴケに絡みついていた植物体、(d) 茎と枝、(e) 茎葉、(f) 茎の横断面、(g, h) 茎葉、(i) 茎葉中央、(j) 茎葉先端、(k) 茎葉翼部、(l) 茎葉横断面

 10月10日に秋田県鹿角市で採集(alt 1200m)したヒメミズゴケ(標本No.772:非掲載)に絡みついていた蘚類を観察した。ヒメミズゴケの茎下部の水中に没した部分に、イトササバゴケなどと共に絡みついていた。ルーペでみるとフサゴケ属 Rhytidiadelphus のようだった。個体数が少ないので処分しようと思ったが、水没状態の環境に生育するフサゴケ属というのは知らなかったので、新たに標本番号を立てて残すことにした。イトササバゴケは処分した。

 茎は赤褐色で、やや羽状に分枝し、葉は乾燥しても展開したままで、葉を含めた幅は1.5〜3mm。多くが途中で千切れていて、茎の長さは不明(a〜e)。茎の表面に毛葉や偽毛葉はない。茎の横断面で中心束があり、表皮は厚膜の小さな細胞からなる(f)。
 茎葉は広卵形〜類円形で、長さ0.8〜2.5mm、葉先が急に細くなって、反り返る(g, h)。茎の位置によって茎葉の大きさには極端に差がある。葉縁はほぼ全縁で、尖った葉先部分には微細な歯がある。中肋は2本で、とても弱く類円形部の中程で消える(h)。
 茎葉の葉身細胞は長楕円形で、長さ30〜50μm、幅5〜8μm、平滑でやや厚壁。葉の先端部ではやや幅が広い(j)。茎葉の翼部では、やや大きめで褐色、矩形の明瞭な区画を作る(k)。
 

 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(m, n) 枝葉、(o) 枝葉中央、(p) 枝葉基部、(q) 枝葉先端

 枝葉は卵形で凹み、長さ0.5〜1.5mm、葉先は急に尖る。葉先には歯があり、茎葉の歯よりも大きく顕著。中肋は2本で、葉の中程に達する。葉身細胞は茎葉のそれとほとんど同じ。

 どうやらコフサゴケ R. japonicus のようだ。これまで出会ったコフサゴケは、遊歩道脇の岩上(標本No.621)や河原の転石の上(標本No.180)についていた。いずれも日当たりのよい場所だった。ところが、今日取り上げたものは、日当たりこそ良いが、ミズゴケの影になる水中にまばらな群落をなしていた。ミズゴケから取り分けているとき、コフサゴケのように思ったが、まさかこのような環境に発生するとは思わず、観察当初は別種だろうと思っていた。観察結果はやはりコフサゴケを示唆している。