Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.826   採集日:2009/12/13   採集地:栃木県、鹿沼市]
[和名:ススキゴケ   学名:Dicranella heteromalla]
 
2009年12月29日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 混生する植物体、(b) 乾燥時:黄矢印、(c) 湿時:黄矢印、(d) 朔をつけた個体、(e, f) 葉、(g) 葉先端部、(h) 葉中央部、(i) 葉基部、(j) 葉横断面:上部、(k) 同前:中央部、(l) 同前:基部

 前日光林道を足尾方面に向かう途中、粕尾峠下で(alt 840〜900m)、日陰の土の斜面に群生していた蘚類を採取した(a)。現地でははっきりわからなかったが、標本を開いてみると、おおざっぱに2種の群落に分けられた(b, c)。ここで取り上げたのは、黄色矢印で示した標本だ。
 標本には長い柄を持った朔をつけた個体が2つ含まれていた(d)。茎は高さ5〜15mm(b, c)。葉は長さ2.5〜3.5mm、三角形の基部から漸尖して長く延び(e, f)、尖端付近の縁と背面には小さな歯がある(g)。中肋は基部では1/3〜3/10ほどの幅があり、中央部から先では葉幅の大部分をしめる(h, i)。葉身細胞は、基部から中央部の細胞(中肋以外の)では矩形で長さ20〜45μm、薄膜で平滑(i)、鞘部の上部では長くなり50〜60μm。翼部の細胞は分化しない。中肋部表面の細胞は矩形で50〜80μm。葉横断面で中肋にはガイドセルとステライドがある(j〜l)。茎の横断面に中心束はない(m)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(m) 茎の横断面、(n) 帽と蓋と取り外した朔、(o) 帽と蓋、(p) 朔と朔歯、(q) 朔歯全体、(r) 朔歯、(s) 朔歯基部、(t) 朔歯上部、(u) 胞子、(v) 朔基部:気孔はない

 朔柄は黄色で長さ1cm前後で、大きく湾曲している(d)。朔は卵形で軽く曲がり、非相称、僧帽形の帽、長い嘴をもった蓋がある(n, o, p)。朔歯は一重で、16枚。朔歯は披針形で、中央部から上では2裂し、上部には小さな乳頭があり、下部には細かな縦条が目立つ(r, s, t)。胞子は径20〜25μm(u)。朔には気孔は見当たらなかった(v)。

 シッポゴケ科 Dicranaceae ススキゴケ属 Dicranella の蘚類だろう。平凡社図鑑のよれば日本産は約20種あり、際だった特徴が少なく、分類はむずかしい、とある。検索表をたどると、ススキゴケ D. heteromalla に落ちる。種の解説を読むと、観察結果とほぼ符合する。以前観察したススキゴケ(標本No.171)と比較して、葉が全体にやや細長い。