Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.843   採集日:2010/01/05   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:ミズシダゴケ   学名:Cratoneuron filicinum]
 
2010年1月22日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a) 植物体、(b, d) 乾燥時、(c, e) 湿時、(f, g, h) 茎葉、(i) 茎葉の葉身細胞、(j) 茎葉の先端、(k) 茎葉の翼部、(l) 茎葉の横断面、(m, n) 枝葉、(o) 枝葉の葉身細胞、(p) 茎の横断面、(q) 枝表面の毛葉、(r) 毛葉

 奥多摩の林道で法面から水流が絶えず流れている岩の表面に何種類かの蘚類が着生していた(alt 630m)。そこに、ミズシダゴケ Cratoneuron filicinum と思われる蘚類が垂れ下がるようについていた。これまでに出会ったミズシダゴケはいずれも茎や枝が立ち上がったものばかりだった(標本No.469No.235)。しかし、今回であったものは、二次茎が軽く斜上こそすれ、全体的にほとんど岩から垂れ下がる状態で広がっていた(a)。乾燥しても葉は縮れない(b, d)。
 岩をはう一次茎は長さ10〜15cmに及び、そこから長さ5〜8cmの二次茎あるいは枝を不規則羽状に出していた。二次茎や枝の基部では表面に多数の毛葉が見られ(q, r)、茎の横断面には中心束があり、表皮は厚膜の小さな細胞からなる(p)。毛葉は披針形〜葉状をしている。
 茎葉は三角形〜広卵状三角形で、長さ1.0〜1.4mm、わずかに凹み、葉頂は鋭く尖り、葉縁には全周にわたって小さな目立たぬ歯がある。中肋は強く、葉頂近くに達する(f, g, h)。葉身細胞は狭い六角形〜長い楕円形で、長さ15〜25μm、幅6〜10μm、やや薄膜で平滑(i, j)。葉の基部は長く下延べし、翼部には大形薄膜で方形〜矩形の細胞が分化し、ほかと明瞭に区画をなす(k)。枝葉は茎葉よりずっと小さくて、幅が細く、基部はわずかに下延する(m, n)。枝葉の葉身細胞や翼部の様子は、茎葉のそれとほぼ同様で、中肋も葉頂近くに達する(n, o)。

 朔をつけた個体はなかった。観察結果を図鑑のミズシダゴケの解説と照合すると、ほぼ合致する。どうやらミズシダゴケとしてよさそうだ。