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[標本番号:No.847   採集日:2010/01/31   採集地:千葉県、富津市]
[和名:ハリガネゴケ   学名:Bryum capillare]
 
2010年2月2日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
(r)
(a) 内房の海浜砂地、(b, c) 植物体、(d) 乾燥標本、(e) 水で戻した標本、(f) 茎上部の葉、(g, h, i) 葉、(j) 葉の上部、(k) 葉の下部、(l) 葉縁の舷、(m) 葉先端、(n) 葉身細胞、(o) 葉基部、(p) 葉上部の横断面、(q) 葉下部の横断面、(r) 茎の横断面

 1月末に千葉県内房の浜に菌類観察にでかけた。防風林の外、コウボウムギやハマニンニクが繁茂する一帯には、ハイゴケなど何種類かの蘚類がみられた(a)。ハナゴケ科の地衣類に混じってハリガネゴケらしき蘚類が円く膨らんだ群れをつくっていた(b, c)。
 ハリガネゴケは3年ほど前に2度ばかり観察している(標本No.140No.83)。この2点は、いずれも山間部の石やコンクリート上に出ていたものであり、標高ゼロ〜数メートルの海浜砂地に生育するものがあるとは思ってもいなかった。念のために持ち帰ってきた。
 茎は高さ8〜15mm、下部の葉は小さく上部の葉は大きい。乾燥すると葉が捻れる(d〜f)。葉はとても柔らかく、上部では長さ2.5〜3.6mm、基部がやや狭い倒卵形で、葉先は鋭頭、葉縁には2〜3層の舷がある(i, l)。葉上部の縁には目立たない歯があり、中肋は葉頂から長く突出する(j)。
 葉身細胞は長い六角形で、長さ40〜65μm、薄膜で平滑(n)。基部には矩形の細胞があり、中肋腹面とその両側の細胞は幅広でやや大きい(o)。葉の横断面で、中肋にはガイドセルはなく、中央部にステライドがある(p, q)。茎の横断面には中心束がある(r)。

 どうやらハリガネゴケ Bryum capillare のようだ。これまでみたものと比較すると、背丈がやや低く、葉はかなり大きい。なお、標本の基部や葉の腹面には多量の砂がまとわりつき、砂粒を取り除くのにかなり難儀した。