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[標本番号:No.0863   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、清川村]
[和名:ナメリチョウチンゴケ   学名:Mnium lycopodioides]
 
2010年4月19日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
(r)
(a) 植物体、(b) 標本:乾燥時、(c) 標本:湿時、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f, g) 葉、(h) 葉先端部、(i) 葉身細胞と二重の歯、(j) 葉の基部、(k) 葉の横断面、(l) 葉縁の横断面、(m, n, o) 中肋の横断面、(p) 茎の横断面、(q) 胞子体、(r) 朔:帽・蓋・本体

 神奈川県東丹沢の本谷川流域で岸壁にチョウチンゴケの仲間がついていた(alt 445m)。ルーペでみたところ、葉は卵形〜楕円形で舷があり、葉縁には二重の歯があり、中肋は葉頂に達し、葉身細胞は丸くて平滑であることから、ナメリチョウチンゴケ Mnium lycopodioides だろうと思った。ナメリチョウチンゴケはこれまで2度ほど観察しているが(標本No.627, No.134)、いずれも朔歯などの観察はしていない。この日出会った群れは朔をつけていた。主に朔と朔歯を観察しようと思って持ち帰っていた。朔はやや若かったが何とか朔歯を観察することができた。
 まずは、現地での同定が間違っていないことを確認するため、持ち帰った標本を水に戻してからかんさつした。茎は長さ、1.5〜2.5cm。上方の葉は長卵形で、長さ3.5〜4mm、鋭頭で中程が最も幅広。下方の葉はやや小振りで2〜3mm、長卵形〜楕円形で鋭頭。いずれも、縁には二重の歯があり、中肋が葉頂に達する。
 葉身細胞は円形〜丸みを帯びた多角形で長さ12〜20μm、基部では楕円形で長さ25〜35μmに及ぶ。いずれもやや厚角で、表面は平滑。葉の舷は数細胞層からなる(k, l)。横断面で中肋にはやや未発達のステライドがある(m〜o)。茎の横断面には中心束がある(p)。
 朔柄は黄褐色〜橙色で、長さ2〜3cm、表面は平滑で(q)、横断面には中心束がある(s)。朔は卵形で、長さ3〜4.5mm、水平から垂れ下がってつく。朔は僧帽状の帽をかぶり、円錐形でやや長い嘴をもった蓋がある。朔壁に気孔はみあたらない。
 
 
 
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(y)
(y)
(z)
(z)
(aa)
(aa)
(ab)
(ab)
(ac)
(ac)
(ad)
(ad)
(s) 朔柄の横断面、(t) 朔壁の横断面、(u) 朔歯、(v) 内朔歯と外朔歯、(w) 外朔歯、(x) 内朔歯、(y) 外朔歯下部、(z) 外朔歯上部、(aa) 内朔歯下部、(ab) 内朔歯中央部、(ac) 内朔歯上部、(ad) 胞子

 朔歯は二重で、各々16枚からなる。外朔歯は披針形〜長三角形で表面は微細な乳頭で被われる(w, y, z)。内朔歯は高い基礎膜をもち、歯突起部と間毛部が交互にならぶ。歯突起の中央には縦に並ぶ穴があり、時に二裂する。間毛は多くが2〜4本ずつまとまって出る(x, aa〜ac)。胞子は球形で、径25〜35μm。口環の有無はどうもはっきりしなかった(w, y)。

 どうやらナメリチョウチンゴケとしてよさそうだ。朔は全体にやや未成熟だったが、朔歯を傷つけずに、本体から蓋を取り外すことができる個体がいくつかあった。朔が大きく朔歯も比較的しっかりしているので、外朔歯と内朔歯とを分ける作業は比較的楽にできた(v)。外朔歯はやや若かったが表面模様はほぼ完成していた。内朔歯の歯突起部分の形がとても興味深い姿をしている。