(a) 植物体、(b) 標本:乾燥時、(c) 標本:湿時、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f) 葉、(g) 葉:腹面側、(h) 葉の中央部:背面、(i) 葉の中央部:腹面、(j) 葉の鞘部、(k) 葉中央部の葉身細胞、(l) 葉鞘部の葉身細胞、(m, n) 薄板:側面、(o, p, q) 葉の横断面、(r) 茎の横断面 |
志賀高原でハイキングコース脇のやや薄暗い土の壁にフウリンゴケが大きな群落を作っていた(alt 1560m)。ルーペや顕微鏡を使うまでもなく、わかりやすいコケだと思う。昨年観察したNo.723の覚書では、文字による記述は省略して画像だけを列挙したが、今回の標本でも同様の扱いとした。フィールド写真(a)には、成熟した朔が写っているが、これは、混成していた別のスギゴケ属のものだ。フウリンゴケの朔はいずれも若い未成熟なものばかりだった。
スギゴケ仲間の同定にあたっては薄板の形状が重視される。図鑑などには、葉の横断面での薄板の姿が描かれている。Noguchi(Part1 1987)などでは、さらに薄板の側面図 (Profile of lamella) が描かれている。そこで、「こけ雑記」でもスギゴケ科の蘚類については、原則として薄板の側面画像と葉の横断面の画像の両者の画像を掲載してきた。
薄板の側面画像を撮影するには、葉の腹面から薄板の一部を取り外さねばならない。フウリンゴケのように薄板が簡単に剥離できて、実体鏡の下で楽に取り外せるものは例外的だ。葉の腹面いっぱいに広がって、葉縁から中肋を境に反対側の葉縁まで、無数の薄板がある場合などは、実体鏡の下で1枚だけ分離するのは結構面倒な作業となる。しかしKOHをうまく使うと楽にバラすことができる(「たわごと」→「組織バラしの応用」)。
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