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[標本番号:No.0987   採集日:2010/08/21   採集地:山梨県、山梨市]
[和名:ヒカリゴケ   学名:Schistostega pennata]
 
2010年8月23日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 自然光の下で、(b) 補助照明の下で、(c) 原糸体のついた土、(d) 原糸体:球形細胞、(e) 原糸体:葉緑体を多数含む、(f) 原糸体:葉緑体が少ない、(g) 植物体の生育する土、(h) 植物体、(i) 標本:乾燥時、(j) 標本:湿時、(k) 葉、(l) 葉身細胞

 奥秩父主脈上に位置する国師岳でヒカリゴケ Schistostega pennata に出会った(alt 2,480m)。登山道の直ぐ脇、大木の根が作る小さな穴の奥、土の表面に原糸体が生育していた。穴の中を覗き込むと原糸体らしきものが黄緑色に光っていた(a)。土の表面の様子が分かる程度の明かりで照らすと、さらに明るく反射した(b)。原糸体は土の表面に薄い膜を作っている(c)。
 場所によって光の色に違いを感じたので、それぞれ別に持ち帰った。原糸体のレンズ状細胞を顕微鏡で覗くと、葉緑体の多い層とごくわずかの層とがある(e, f)。淡い白緑色の光は葉緑体の少ない部分から、鮮やかな黄緑色の光は葉緑体の多い部分からの反射光だった。
 明るい照明で原糸体の周辺をよく見ると植物体があった(g)。小さなシダ植物のような姿をした配偶体は、乾燥してもあまり姿を変えない(i)。葉の基部は長く下延し上下の葉と基部でつながり、全体で一枚の腹葉のように見える。葉身細胞は長い紡錘形。

 ヒカリゴケについては、標本No.965で胞子体まで含めて詳細に観察しているので、ここでは文字による観察記録は掲載しなかった。植物体の採取や観察は楽だが、原糸体の顕微鏡観察には多少難儀した。原糸体のうち光を反射するレンズ状細胞は土の上に薄い層をなしていた。顕微鏡で観察するには、土の部分をなるべく裂けて原糸体の層だけを取り出してプレパラートにする必要がある。結局かなりの量の土が混じってしまった(d, e, f)。