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[標本番号:No.1029 採集日:2010/10/12 採集地:愛媛県、久万高原町] [和名:クジャクゴケ 学名:Hypopterygium fauriei] | |||||||||||||||||||
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四国の面河渓で採取したコケ類も残り数点になった。今日はクジャクゴケ属 Hypopterygium を観察した(alt 750m)。腐植土から岩にかけてクジャクの羽のような姿をみせていた。一本の二次茎を掘り出すと、地下を匍う一次茎は隣接する別の二次茎とつながっていた。 枝は左右2列の側葉と腹葉が規則正しく整然と並ぶ。側葉は長さ1.2〜1.6mm、歪んだ卵形で非相称。葉縁には全周にわたって2列になった舷がある。中肋は葉先からずっと下で消え、葉面を左右不均等に分ける。葉面の広い側の縁には基部近くまで歯がある。葉中央部の葉身細胞は菱形〜六角形で、長さ20〜40μm、葉縁や葉頂ではやや小さく、基部中肋近くでは30〜45μm、平滑でやや厚膜。腹葉は類球形で、側葉よりずっと小さく、左右相称、葉先は急に尖り中肋は突出部に続く。腹葉の縁にも全周にわたって舷があり、葉の上半部には歯がある。茎の横断面には中心束はなく、表皮は比較的薄膜の細胞からなる。 |
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苞葉は朔の基部を鞘状につつみこみ、先端は長く延びる。苞葉の中肋は先端に達し、葉身細胞は長さ40〜70μm、六角形。 朔柄は茎の上部に1本〜数本つき、赤褐色で長さ2〜3cm。朔は水平ないしやや下垂し、長卵形で僧帽形の帽と、長い突起のある蓋をもつ。朔歯は二重で各々16枚。外朔歯は披針形で、下部には横条があり、上部から先端は大きな乳頭に被われる。内朔歯は高い基礎膜をもち、歯突起と間毛がある。朔の基部には気孔がある。胞子は球形で、径16〜18μm。
フィールドでは帽や蓋をつけた朔が多数みられたが、標本ではそれらは殆ど落ちてしまい、蓋や帽を見つけられなかった。また、朔歯も崩れたものばかりとなっていた。内外の朔歯を分離するのは生個体からでないと難しいようだ。口環の有無はよくわからなかった。 |
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