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[標本番号:No.1121   採集日:2011/07/21   採集地:広島県、北広島町]
[和名:オオミズゴケ   学名:Sphagnum palustre]
 
2011年7月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 標本、(d) 茎と下垂枝、(e) 開出枝と下垂枝、(f) 茎と茎葉、(g) 茎と茎は:サフラニン染色 [以下同]、(h) 茎の横断面、(i) 茎の表皮、(j) 茎葉、(k) 茎葉の上部、(l) 枝の表皮、(m) 枝の横断面、(n) 開出枝の葉、(o) 開出枝の葉背面上部、(p) 開出枝の葉腹面上部、(q, r) 開出枝の葉の横断面:右上が腹面側

 広島県の北部、島根県に近い臥竜山聖湖キャンプ場に、きのこ観察で入った折にミズゴケの群落にであった。日陰のやや湿った斜面一面に群生し、朔をつけたものもみられた(alt 825m)。たぶんオオミズゴケだろうと思った。今朝は久しぶりにこのミズゴケを観察した。ミズゴケを観察するのは昨年8月9日のワタミズゴケ(標本No.983)以来のことになる。

 最初に開出枝を一本つまみ出しサフラニンで染色して、実体鏡の下で葉をこそぎ落とした。裸になった枝の表皮細胞の表面には螺旋状肥厚がある。ミズゴケ節 Sect. Sphagnum のものだ。ついで、一枚の葉を背面側を上に向けた状態にして、顕微鏡で覗いてみた。葉緑細胞は腹面側に開き、透明細胞との境界面は平滑に見える。この時点でオオミズゴケ S. palustre であると確信したが、念のために葉の横断面を切り出してみた。すると葉の横断面で葉緑細胞は二等辺三角形で、腹面側に開き、透明細胞と接する部分は確かに平滑だ。
 

 
 
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(y)
(y)
(z)
(z)
(s) 下垂枝の葉、(t) 下垂枝の葉背面上部、(u) 下垂枝の葉腹面上部、(v) 朔と朔柄、(w) 朔の上部、(x) 朔の気孔、(y) 朔の横断面、(z) 胞子

 種の同定のためであればミズゴケ節のものでは不要だが、下垂枝の葉についても透明細胞の表裏の様子を確認した。開出枝の葉の透明細胞の様子とほとんど変わりない。黒色の朔は球形で蓋は円形。朔の表面には多数の気孔がある。気孔の頻度が高いので、朔の断面を切り出してみると、たいてい気孔を含んでいる。オオミズゴケについてはすでに何度も観察し、詳細に記述しているので、ここでは画像だけを掲げることにした。