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[標本番号:No.0983   採集日:2010/07/27   採集地:山形県、鶴岡市]
[和名:ワタミズゴケ   学名:Sphagnum tenellum]
 
2010年8月9日(月)
 
(a)
(a)
(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
(l)
(a) 月山の池塘、(b) 標本、(c) 開出枝と下垂枝、 [以下サフラニン染色]  (d) 茎と枝、(e) 枝と枝葉、(f) 茎葉と枝葉、(g) 茎葉、(h) 茎葉背面上部、(i) 茎葉背面中央、(j) 茎葉腹面上部、(k) 茎葉腹面中央、(l) 茎葉の横断面

 手許に残っていたミズゴケ標本のうちの最後のひとつを観察した。7月27日に東北の月山で出会ったハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata のワタミズゴケ Sphagnum tenellum だ(alt 1440m)。残念ながら、ガッサンミズゴケ(=コバノミズゴケ) S. guwassanense には出会えなかった。
 ワタミズゴケは繊細で特徴的なミズゴケなので同定は比較的やさしい。すでにこれまで4回ほど観察しているので(標本No.781, No.768, No.714, No.679)、アップするのはやめようかと思ったが、山形県で見たのは初めてだったので、文字による記述は省略して画像のみをアップした。
 
 
 
(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(s)
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(t)
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(u)
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(v)
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(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 枝葉、(n) 枝葉背面上部、(o) 枝葉背面中央、(p) 枝葉腹面上部、(q) 枝葉腹面中央、(r) 枝葉の横断面、(s) 茎の表皮、(t, u) 茎の横断面、(v) 枝の表皮、(w, x) 枝の横断面

 茎葉も枝葉も小さくて脆いので、横断面の切り出しは多少難儀した。ここ1週間ほどの間に20点ほどのミズゴケを観察したが、「覚書」にアップしたのは本標本を含めて5点になる。他の15点は、すでに何度も「覚書」にアップしたので、そのまま標本箱に格納することになった。

 ちなみに、ワタミズゴケと同定した根拠だけを簡略にメモしておこう。肉眼的に繊細でやわらかく、全体的にボテッとした感触がないことから、ミズゴケ節、キダチミズゴケ節、キレハミズゴケ節、ウロコミズゴケ節でないことはすぐわかる。18倍ルーペによる観察から、枝葉の透明細胞の接合面に沿った多数の孔は感じられない。枝葉の形からもユガミミズゴケ節ではない。開出枝と下垂枝の葉の形からはスギバミズゴケ節の可能性も低い。
 最初に枝葉をしごき取ってスライドグラスに寝かせて顕微鏡の低倍率でみると、葉緑細胞の底は背面側にある。これでハリミズゴケ節ということになる。裸になった枝の表皮をみると首の長いレトルト細胞があり、茎葉の形と大きさは枝葉とよく似ている。平凡社図鑑の検索表からは躊躇なくワタミズゴケに落ちる。滝田(1999)種の解説を読むと観察結果とよく符合する。

 ここに掲げた画像は、ワタミズゴケと同定した後に、茎と枝の一部を切り出してサフラニンで染めて、各々のパーツをあらためて撮影したものだ。枝の表皮の様子などは、観察時に合焦位置を少しずつずらして全体のイメージを捉えることができるが、写真表現ではそれができない。一枚の画像で明瞭に表現するには、良質で高性能の実体鏡を使っても難しいだろう。