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[標本番号:No.1199   採集日:2017/09/04   採集地:群馬県、片品村]
[和名:ヒカリゴケ   学名:Schistostega pennata]
 
2017年9月5日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
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(h)
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(i)
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(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 光る原糸体、(c, d) 植物体、(e〜g) 茎と葉:by 実体鏡、(h, i) 茎と葉:by 顕微鏡、(j) 葉基部の細胞、(k) 葉中央部側面の細胞、(l) 葉先端の細胞

 9月4日に丸沼高原からロープウェイを使って日光白根山に登った。途中の標高2,380m付近で登山道脇の岩の奥にヒカリゴケを見つけた。よく見れば、周辺の岩穴や針葉樹の根の作った穴の奥でも黄緑色に光っていた。7年ぶりの出会いだった(標本番号 No.987)。写真(a)は重なり合った岩の向こう側から光が入ってとても明るかった。写真(b)は岩の奥に広がっていて脇には植物体が群生していた。いずれも基物の土はとても軟らかだった。

 植物体は黄緑色でとても脆く、朔をつけない茎は、茎の長さ5〜7mm、まるでタイ類のように葉が左右二列に並び、扁平な姿をしている。葉は卵状披針形で、長さ0.4〜1.2mm、鋭頭、基部は下延し隣接する側葉と融合する。葉縁はほぼ全縁で、中肋はない。葉身細胞は葉の基部から中央部では長い菱形〜六角形で、長さ60〜100μm、幅15〜30μm、薄壁で平滑。葉の先端部では菱形〜六角形で、長さ40〜80μm、幅15〜25μm。葉の縁の細胞は細長いため、場所によってはまるで舷があるかのように見える。
 

 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
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(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 朔と朔柄、(n) 胞子体、(o) 苞葉、(p) 苞葉の細胞、(q) 朔:by 実体鏡、(r) 朔:by 顕微鏡、(s) 胞子、(t, u) 土の上に広がる原糸体、(v〜x) 原糸体

 胞子体をつける茎は、長さ1〜3mm、茎の先端に小さな葉を5〜6列につける。葉は扁平にではなく、茎の周りに均等につき、披針形で、長さ0.5〜0.8mm、鋭頭、全縁、中肋はない(r)。葉身細胞は朔をつけない茎とほぼ同じ。
 朔柄は茎先端の鞘部から長く伸び、まるでタイ類のように非常に脆く、長さ4〜6mm。朔は類球形〜楕円体で、朔歯はなく、口環がある。胞子は卵形〜球形で、長径10〜12μm。原糸体は永続性で、配偶体の周囲ばかりではなく、ずっと離れて広がり、一部の細胞は球形となり、平面的ないし繊維状に並ぶ。

 光る本体は原糸体だが、この原糸体は湿って柔らかい土の上に広がっているために、土から原糸体だけを取り外すのは難しい。持ち帰った土塊から原糸体をなんとか取り外して、スライドグラスに載せて撮影したがかなり難儀した。原糸体の球形細胞の中には葉緑体が一方の隅に集まっている。撮影方向によってはこの葉緑体の偏りがなかなかうまく表現できない。このため原糸体の球形細胞だけで検鏡写真を50枚ほど撮ってしまった。