2007年10月5日(金)
 
検索表を使ってみた (6)
 
 さらに詳細に検討するとなれば、きのこ先進国で書かれた図鑑や専門書にあたる必要がある。ここから先は和名は一切通用せず、学名だけの世界となる。ベニヤマタケにあてられた学名は Hygrocybe coccinea (Schaeff.:Fr.) Kummer となっている。
 たとえば、"Dictionary of the Fungi 9th" で "Hygrocybe" を引くと、そこには代表的な文献がいくつも掲載されている。それらの文献にあたればさらに詳しく知ることができる。最近ではネット上からも多くの情報を得ることができる。
 定評のある総合図鑑である「スイスの菌類図鑑(Fungi of Switzerlanad)」が手元にあるのでこれにあたってみた。Vol.3、No.83(p.104〜105)に、カラー写真と検鏡図が掲載され、詳細な解説が英語で記されている(英語版)。そこに記された特徴をあらためて再確認すると典型的ではないが、ベニヤマタケとして大きな間違いではなさそうだ。
 ヨーロッパの菌類シリーズ(Fungi Europaei)では、第6巻に "Hygrophorus" というモノグラフがある。そこにはベニヤマタケ Hygrocybe coccinea の変種として H. coccinea var. marchii とか H. coccinea var. umbonata などに言及している。それらを詳しく知るには、巻末に列挙された参考文献や引用文献にあたることになる。菌類洋書・自然史洋書の通信販売で著名な佐野書店では、「2007年9月の文献案内」としてヌメリガサ科文献を重点的に取りあげている。著名な良書がいくつも並んでいる。

 ちなみに、保育社の図鑑を使わずに、海外の文献の検索表を使って件のきのこを検索すると、複数の文献でHygrocybe coccinea に落ちた。著名な入門書として知られる "How to Identify..." シリーズでは Hygrocybe属に落ちる。"Mushrooms Demystified" では Hygrocybe coccinea までたどれる(雑記2007.9.20)。

 ロウ質の赤色のきのこを観察し、いくつかの図鑑やモノグラフに目を通してみたが、あらためて保育社「原色日本新菌類図鑑」がよくできていることを感じた。ただ、自らの観察結果をなるべく客観的に読みとって、批判的に読むことが必要なのはいうまでもない。

 今日から約10日間中国四国地方に出かけるので、6〜15日は「今日の雑記」はお休み。そろそろ西穂高岳独標に向けて出発だ。am3:00、ありゃ! 雨が降ってきた。


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