2014年5月22日(木) 子嚢菌の鈎状構造(crozier, crosier, uncinulum)
 川内村で採取してきた水生子嚢菌(a)を顕微鏡で覗いて遊んだ(雑記2014.5.20)。子実体を縦切りして(b)、その上部表面に薄く広がる子実層の部分を薄切りして、まず水道水(c, d)とメルツァー試薬(e, f)で封入した。子嚢は非アミロイド。
 水道水で封入してみると、子嚢先端は薄膜で蓋があるかのように見える(d)。一方、メルツァー試薬では先端はやや厚膜になっているようにも見えるが、今一つはっきりしない(e, f)。もし子嚢先端が薄膜ならば(蓋付きの)チャワンタケ属、厚膜ならば(孔をもつ)ズキンタケ属となり、属レベルで別の仲間となる。
 そこでフロキシンで染めて3%KOHで封入して見た(g〜l)。すると子嚢先端が厚膜であることが一目瞭然となった(h, i)。先端の厚膜部に筒状の孔があると想定されるのだが、いまひとつ判然としない。状況証拠からはPeziza(チャワンタケ属)ではなくLeotia(ズキンタケ属)のようだ。2009年5月にチャワンタケとして雑記に載せたきのこは、今回の子嚢菌と同一種の可能性が高い。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 久しぶりにクロージャー(crozier)を確認してみることにした(雑記2009.5.10同2009.2.5)。クロージャーは鈎状構造とか錫杖とかフックなどとも称され、子嚢菌の造嚢糸に特異的な構造だ。形こそ担子菌のクランプ(かすがい構造)と似ているが、由来も出現部位も異なる。
 子実層を十分によくバラせば楽に観察できるが(i, j, k)、厚く重なった状態では確認することが難しい(h, l)。担子菌のクランプ同様、いちどは自分の目で直接見ておきたいものだ。


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