図鑑類などには「北海道と本州の亜高山帯で発生が認められている」とか「ややまれ」などと記述されている。はじめて出会ったとき、それがニカワウロコタケであるとの認識はなかった。何かはわからないが「北海道でみられる。やや稀」といったきのこの一つに類似のグニャグニャしたものがあったっけ、そんな印象だった。2000年9月23日のことだ ったが、この日は親しいキノコ仲間4人で日光を歩いていた。ハルニレの倒木にこのキノコを見つけたのだが、他の2人は大して関心を示さず先に行ってしまった。立ち枯れやら老木にも多数発生していた。とりあえず多数撮影して、サンプルもいくつか持ち帰った。
持ち帰ったきのこを図鑑でみるとどうやらニカワウロコタケらしい。しかし検鏡してみるとミクロの記述が図鑑とは何ヶ所か異なっている。この年の千葉菌類談話会のスライド大会でジャガイモタケとともにニカワウロコタケを発表した。仙台の安藤洋子氏がこのキノコに関心を もっており、宮城県の栗駒山でも発生が見られるとのことだった。これがきっかけで翌2001年8月に安藤洋子氏、菌懇会事務局の後藤康彦氏らと計4名で日光を観察することにな った。このときも多数のニカワウロコタケに出会え、サンプルもたっぷり採取することができた。ホシアンズタケを観察しているとき、きのこ狩りの人たちがニカワウロコタケをスーパーのポリ袋いっぱい抱えて話しかけてきた。彼らに言わせると「おいしいキクラゲ」だということだった。確かに、大型のキクラゲに見えなくも無い。
この年9月には長野県戸隠高原でも見つけることができた。やはりハルニレの立ち枯れ から発生しており、このときは1個体を見ただけだった。日光では2002年9月にも多数の 発生を確認している。おそらく、ニレ科のある亜高山帯ならばかなり広範囲に例年発生している地区があるのではないだろうか。
キクラゲと一緒で検鏡サンプルをなかなか上手く切り出すことができない。いっそのこと乾燥させたものから切り出せば楽にプレパラートが作れるのではないかと思い、やってみると考えていたのとはかなり違っていた。非常に硬くなり、かえって薄片の切り出しに苦労してしまった。そして、シスチジアの姿が生のときとはまるで違ってしまっていた。乾燥方法か戻し方に問題があったのだろうが、思いのほかやっかいな作業を強いられた。(2002.10.20)
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