4年間捜し求めてやっと出会えたのは2003年4月のことだった。かなり前に埼玉きのこ研究会のM.S.さんから、オオズキンカブリタケとこのテンガイカブリタケの発生場所を図入りで詳細に教えてもらった。その翌年、教わった場所に行ってみると、オオズキンカブリタケには出会うことができた。7〜8年ぶりの対面に感激するとともにM.S.さんには感謝感謝であった。この日はテンガイカブリタケには会えず、他の地域もさんざん探したがやはり見つけることはできなかった。その後何度か同じ場所やら、別の場所で類似の条件を持ったような地点を探したが結局、この年はテンガイカブリには出会うことができなかった。
以後、毎年4月になるとM.S.さんに教わった場所やら、自分たちで見つけた場所に何度か通い続けた。しかし、それらの場所にはオオズキンカブリタケは発生するのだが、テンガイカブリタケはみることができなかった。成菌になるとオオズキンカブリタケは12〜18cmほどと、見落としにくい大きさに育つ。それに対してテンガイカブリタケは成菌になっても4〜10cmほどの背丈にしかならない。このサイズだと周囲の草などにまぎれてしまって見落としても不思議は無い。ここ数年間は4月というと何ヶ所かのポイントにテンガイカブリタケだけを求めて通い続けた。
2003年の4月17日のことであった。オオズキンカブリタケを観察した後、チャムクエタケモドキを改めて観察しようと、前年に出会った場所に出向いて見た。そこには予測どおりにチャムクエタケモドキが多数発生していた。撮影したり採取したりしているうちに、ふと足元をみると、なにやら潰れたきのこがある。よくみるとオオズキンカブリタケの幼菌である。その場所にはまさかオオズキンカブリタケがあるなどとは考えてもいなかったので慌てた。周囲をていねいに見ると7〜12個ほどの幼菌が見つかった。これら幼菌の中に何とも妙な姿をしたものがあった。頭部の皺がとても少ない。さらにのっぺらぼうの頭部にさらに小さな縦皺を持ったミニ頭部を載せた奇形などもあった。オオズキンカブリタケにしてはどうも変だと感じたので、これらの幼菌をいくつか持ち帰った。
持ち帰ったオオズキンカブリタケの幼菌と思われるきのこを検鏡してみると、予想通り未熟子嚢ばかりで胞子はほとんどみられなかった。ただ、気になることがあった。未熟子嚢の中に胞子の素ともいえるような気泡を4つもった子嚢やら、8つもった子嚢がみられることだった。オオズキンカブリタケでは最初に8つの胞子ができて成熟するにつれ6つが退化して消滅するのだとしたら、このような未熟子嚢があっても不思議は無い。しかし、最初から2つないし4つの胞子しか作らないとすれば、この未熟菌はオオズキンカブリタケではないことになる。もしかしたらこれはテンガイカブリタケではあるまいか。
いずれにせよ、このとき知った場所にはテンガイカブリタケがでる可能性が非常に高いだろうと考えた。10日後の4月27日に、「きのこ屋」の高橋 博氏と二人で再度この場所に出むいた。小さな頭部だけをコケの間から見せているものがある。白い柄をさらして大きく湾曲し今にも頭が地面にとどきそうなものがある。8〜10個ほどのテンガイカブリタケに出会うことができた。皮肉なものである、初めて出会うことのできたテンガイカブリタケをきちんと撮影しようと思ったいたのだが、肝心のデジカメ(ニコンのCoolPix)の合焦機能が不調である。いろいろと条件を変えて80枚ほど撮影したにもかかわらず、ピントのあっていたのは数枚しかなかった。大部分の撮影データは泣く泣く捨てるしかなかった。来年は、別のデジカメを持ってあらためて撮影のやり直しをしたい。(2003.04.29)
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