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2019年7月26日(金) ネッタイベニヒガサのこと:異形担子器・胞子
 最近の雑記で2度ほどきのこの和名をネッタイベニヒガサとはっきり記している(雑記2019.7.23[栃木県民の森]、同2019.7.26[日光だいや川公園])。
 何人かの方から、このきのこはただのベニヒガサではないのか、といったご指摘を頂いた。確かに肉眼的な観察からはそのように見える。しかし、外見はそっくりでも、このきのこには大小二種類の担子器と同じく大小二種類の胞子が混在している。
 そこでこの2ヵ所で出会ったきのこ(a, b)について、カサ片からヒダの薄片(c)の子実層(d〜f)と胞子紋から得た胞子の画像(j〜l)をここに載せておくことにした。(g)〜(h)の画像はヒダ片をフロキシンで染め3%KOHで封入して軽く押しつぶしたものだ。
 このきのこに関しては「ねったい(熱帯)」という非常に不適切な和名をつけられてしまったが、北日本の青森県でも高い頻度で見られる。ちっとも「熱帯」性のきのこではなく、どこにでもある杉林などで結構高い頻度で出会うきのこだ。
 Hygrocybe(アカヤマタケ属)のきのこにはこのような大小2種類の異形担子器・異形胞子をもつものが比較的多い。他の科や属ではこれまで出会ったことがないがHygrocybeに関してはこれまで4〜5種類ほど異形担子器をもつ仲間にであっている。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 小さなカサ片から落ちた胞子紋を見ても、大型胞子が多く分布する領域(k)と小型胞子が多く分布する領域(l)があるが、これはどうも規則性がなさそうだ。
 小ヒダや孫ひだに小型胞子が多くて親ヒダに大型胞子が多いとか、カサの縁に近いあたりに大型胞子が多く柄に近い側に小型胞子が多いといった傾向でもあると面白いのだが、これまでの観察例ではそういった傾向は全く見られなかった。