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[標本番号:No.72   採集日:2007/01/07   採集地:栃木県、栃木市]
[和名:ナガヒツジゴケ   学名:Brachythecium buchananii]
 
2007年1月13日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 古いお堂の崩壊跡の材の表面をコケがはっていた。1月7日、栃木県満願寺の奥の院先の鍾乳洞のすぐ脇だ。不規則に羽状に分枝し、一部の枝は10cm以上にわたって延びている(a)。充分成熟した朔もつけていた(b, c)。
 雨の直後であったが、葉は湿っていてもあまり開かない。逆に、乾燥しても、葉は覆瓦状に軽く茎に近づく程度で、巻縮するまでには到らない。要するに、乾湿にかかわらず同じような状態だ。葉先は長い毛が生えたかのように見える(d)。
 茎葉は枝葉よりやや大きく、基部が幅広である。枝葉を取りだしてみた。卵状披針形で長さ1.5〜1.8mm、先端が芒となり、中肋が葉の2/3あたりまである。葉先の芒というか針のような部分には、非常に微細な歯があるようにもみえるが、葉縁は全縁である(g)。
 翼部の細胞はやや矩形気味であるが(h)、葉身細胞は線形で(j)、毛葉のようなものはみられない(i)。葉の横断面をみると、中肋の構造は意外と未分化である(k)。茎の表皮付近は小さくて厚膜の細胞からなっている(l)。
 胞子体をつけていたので、まずは朔からみた。朔は長卵型で、朔柄に対して曲がってついている。白い帽をかぶり(m)、やや尖った蓋をもつ(n)。朔歯は二重で内外は同じような高さで、いずれも16本(o, p)。朔柄の表面は全体に平滑で、表面は褐色で厚壁の細胞からなる(q, r)。
 アオギヌゴケ科のナガヒツジゴケ Brachythecium buchananii だろうと思う。以前にもこの蘚は自宅団地で観察しているが、その折りには、胞子体をつけたものは無かった(覚書2006.12.25)。そこで、茎葉の写真は掲載しているので、今回は写真をアップしていない。