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[標本番号:No.101   採集日:2007/02/12   採集地:静岡県、静岡市]
[和名:シッポゴケ   学名:Dicranum japonicum]
 
2007年2月16日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 2月12日に静岡県の南アルプス南部林道を奥まで進んだ。標高1,200mほどの尾根上の唐松林一帯を絨毯のように覆ったコケを持ち帰った。密に着けた細長い葉、赤っぽい茎の美しいコケである。茎は長さ8〜10cm、わずかに枝分かれし、茎の表面は褐色の仮根に覆われる。茎半ばから下は、特に顕著である(b)。乾燥しても湿っても姿はあまり変わらない。
 葉は披針形で(c)、長さ10〜12mm、上部は溝状になり(e)、縁には大きな鋭い歯がある(d, g)。細い中肋が葉頂まで達し、背面には鋭い歯がある(d, e)。葉の基部近くの縁には歯はなく、褐色を帯びた翼部が発達している(f)。
 葉身細胞は、長楕円形で、膜には強いくびれがあり(g, h)、翼部では褐色で厚壁矩形の細胞からなる。葉の幅に占める中肋の幅は狭く、基部横断面で、葉の幅の1/12ほど、葉の上部でも1/8ほどである。葉の3ヵ所、基部、中部、上部で横断面を切り出してみた(j〜l)。茎の横断面をみると、赤褐色の表皮細胞の周囲には多数の仮根がついている。
 葉身細胞の膜、中肋の幅と背面の歯、翼部の細胞、茎表面の仮根など、顕著な特徴がいくつもある。シッポゴケ科には間違いないだろう。地上腐食土に発生し、ときに15cmにも達する長い柄などから、シッポゴケ Dicranum japonicum だろう。
 昨年7月30日に山形県米沢市の山中で出会って以来だった(覚書2006.10.7)。昨年は、葉の基部でしか横断面を確認しなかったので、今回は、葉の中部と上部でも横断面を切り出して中肋の様子を確認してみた。