HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.143   採集日:2007/03/10   採集地:山梨県、道志村]
[和名:エゾスナゴケ   学名:Racomitrium japonicum]
 
2007年3月20日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 標高1,000メートル弱を走る山梨県道志村の林道脇は、ところどころで小さな支流を横切る。そこは川砂に被われる。川砂と砂利の混じる地表をスナゴケの仲間が被っていた(a)。湿った部分と(b)、乾いた部分(c)では見た目がずいぶんと異なる。地表にはいつくばって、湿った開いたコケを横から撮すと、非常に美しい姿をみせてくれた(d)。
 密集した茎は直立し、高さ1.5〜2.5cm、葉は放射状につき、乾燥すると茎に密着するように圧着し、湿ると反り返るように開く。葉は卵状披針形で、長さ2〜3.5mm、中央に一本の中肋が通り、それを境に二つに折り畳まれたような形している(e)。中肋は先端まで届き、歯をもった透明先となる。普通に葉を取り外しておくと、みな二つに折り畳まれた状態となり、なかなか開いてくれない(f)。透明尖の部分には大きなバラツキがあり、長いものやほとんど無い葉もある。
 以前にもエゾスナゴケは静岡県寸又峡で観察しているが(覚書2007.2.19)、砂混じりの地表で見たのは初めてだった。いつも通り、葉身細胞(g)、翼部の細胞(h)、葉の横断面(i)、中肋部(j)などを観察した。葉縁の部分はかなり厚ぼったく見えるが、横断面を確認すると、葉身細胞は1層であり、強く巻き込んでいる(k)。それにしても、葉身細胞表面のパピラは大きい(j, k)。また、葉身細胞の姿は明瞭に捉えがたく、細胞膜は波を打ったように肥厚している(g)。茎の断面をみると、表皮細胞は厚壁の小さな細胞からなり、中心束は見られない(l)。
 エゾスナゴケ Racomitrium japonicum に間違いなさそうだ。この次エゾスナゴケの観察結果を記録するのは朔をつけたものに出会ったときになりそうだ。