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[標本番号:No.150 採集日:2007/03/21 採集地:千葉県、君津市] [和名:ホソバミズゼニゴケ 学名:Pellia endiviifolia] | |||||||||||||
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千葉県君津市にある久留里城址公園の切り通しの崖一面に、ジャゴケやヒメジャゴケなどに混じって、ホソバミズゼニゴケが無数に朔をつけていた(a, b)。胞子体はさながらひ弱なもやしを思わせる。ホソバミズゼニゴケは一度詳細に観察しているが(覚書2006.9.1)、朔をつけたものに出会うのは今回初めてだった。 朔は黒い球形のものから(c)、四裂して反り返ったものまで(d)、群の中にひととおりそろっていた。朔柄は蘚類のそれと比較して、非常に脆くちょっとした風でも簡単に折れてしまう。若い朔柄は緑色だが(d)、頭部が裂けるころには白色となる(d)。朔を多数つけた葉状体は枯死したかのように黒くなって薄くなったものが目立った(a)。 鮮やかな緑色をした新しい植物体の部分をとりだして裏面をみた(e, f)。糸状の腹鱗片は仮根に紛れて分かりにくい(g)。葉身細胞は薄膜でトリゴンはみられない。仮根の部分を拡大してみると、裏面の葉身細胞までみえる(h)。仮根だけを取り外してみると、ゼニゴケやヒメジャゴケなどとは違って有紋型の仮根はなく、すべて平滑な仮根のみである(i)。 葉状体の一部を切り出してみると、同化組織の分化はみられず、背面には葉緑体を多数含んだ1層の表皮細胞があり(k)、裏面には暗紫色の表皮細胞が見られる(l)。同じ葉状体の苔類でも、ジャゴケやヒメジャゴケなどとは大違いである。 |
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成長段階のことなる若い朔を4つ並べてみた(m)。朔は若いうちは黒い球形でどこにも割れ目などはない(n)。しかし、しだい褐色となり、頭部に十字型に割れ目がはいり(o)、割れ目が広がり(p)、やがて4枚に分かれて外曲する(q)。緑色の胞子を跳ばし切ると弾糸だけが残る(q)。 胞子をすべてはじき飛ばした弾糸をとりだしてみた(r)。螺旋は二重のものやら三重のものがあり(s)、弾糸の端には朔の底についていた名残が見られる(f)。開いた朔をみたところ、内部には潰れた胞子の他に、線虫、ワムシ、ケイ藻などがみられた。 まだ破れていない黒い球形の朔の内部には、胞子と弾糸が詰まっていた(u, v)。胞子は多細胞からなり、楕円形〜球形で径80〜100μmほどある(w, x)。 |
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