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[標本番号:No.158 採集日:2007/03/21 採集地:千葉県、君津市] [和名:ヒメシノブゴケ 学名:Thuidium cymbifolium] | |||||||||||||
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千葉県君津市の城址公園で採取した最後のコケをやっと観察する番がきた。遊歩道脇の側溝とそのすぐ上のジメジメした斜面にでていた(a)。シノブゴケ科のコケだろうとまでは分かったが、過去に観察したことのあるものなのかどうか全く見当がつかなかったので、持ち帰った。硬い感じで、しっかりした太い茎をもち、小形のシダの様な印象を受けた(b)。 茎はトヤマシノブゴケなどに比較すると、かなり太く、10〜25cmの長さを持ち、規則正しく数回分枝し、左右の枝はほぼ同じ長さである(c, d)。茎や枝の表面は、糸状やいろいろな形の毛葉に被われている(e, f)。茎葉は広卵形で先が急に細くなり、中肋は葉先に達する。 枝葉は茎葉に比べて一回り小さく、葉身細胞背面にはサイの角を思わせるような尖った乳頭がある(g, i)。葉の形は茎葉とほぼ同じだが、中肋は尖端に達しないものが多い(h)。また、茎葉、枝葉ともに、中肋の背面には疎らに歯がある(j)。 ここまで観察しているうちに、ホンシノブゴケ Bryonoguchia molkenboeri だろうと判断したので、茎葉の横断面切り出しはせず、小さな枝葉の、中肋がやがて消えそうな葉先の断面を切ってみた(k)。茎葉の横断面は2月に撮影している(覚書2007.2.9)。枝の断面からは糸状の毛葉がでている。そのすぐ脇に枝葉の一部の横断面もみえる(l)。枝に中心束はない。 結果的にホンシノブゴケだったが、現地で同定できるまでにはいたっていないことを感じた。20倍のルーペでみたとき、葉の表面に尖った乳頭があるように見えたので、もしやとは思ったが、類似種との違いを理解していないので、結局分からなかった。
[修正と補足:2007.08.09] |
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ホンシノブゴケ属では、茎葉の葉身細胞は平滑で、枝葉の葉身細胞にのみ牙状の乳頭をもつとされる。それにたいして、シノブゴケ属では茎葉にも枝葉にも乳頭をもつ。この標本(No.158)に再検討してみると(m)、茎葉の先端こそ鋭い透明尖をもつようには見えにくいが(n, o)、中には長い透明尖をもった茎葉もある(p)。しかし、何よりも茎葉下部の葉身細胞には、明瞭な乳頭があり、平滑ではない。したがって、ホンシノブゴケ属との判断そのものが誤っていた。 | |||||||||||||