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[標本番号:No.188 採集日:2007/04/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:ヒメミズゴケ 学名:Sphagnum fimbriatum] | |||||||||||||||||||
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先週の土曜日(4/7)、オオズキンカブリタケ Ptychoverpa bohemica を観察するために、栃木・福島県境の山に入った。キノコはまだ幼菌が出たばかりだったが、帰路に寄った湿原でウロコミズゴケなど数種類のミズゴケを見ることができた。ウロコミズゴケについては、昨年8月17日の覚書はごく簡略に記しただけなので、8月10日に [修正と補足] として写真を追加した。 今回持ち帰った種については、写真も少し多めに並べて、観察結果を記すことにした。発生していた湿原は、うかつに足を踏み入れると膝まで潜る泥沼だ(a)。いかにもミズゴケ類といった姿で(b)、茎の長さは8〜16cmほどあり、枝の先に細長い枝が集中してついている。長く伸びる枝は、垂れ下がる枝の方が側方にでるものよりもずっと長い(c)。 茎葉は枝に密着してつき(e)、矩形で葉先から側面までささくれている(f)。基部に近い葉縁には舷のような構造があり(g)、葉身細胞には葉緑体が非常に少ない(h)。枝葉は鱗状につき(d)、長卵形で葉先は細くなり、中央部腹側は凹状で、先端は内側に巻き込む(i)。枝葉の縁にも舷があり(j)、透明細胞は薄い膜で3〜6個に仕切られる(k)。 茎の横断面(l)と枝の横断面(m)を比較してみた。茎では表皮に1〜2層の大型薄膜の細胞があり、その内側に厚膜の小さな細胞が厚い層をなしている。一方、枝では表皮細胞は1層で大型薄膜、その内側の厚膜細胞層はあまり発達していない。なお、茎の表皮細胞の表面には肥厚した線などはみられない(n)。 枝葉の横断面を何枚か切り出してみた(o)。透明細胞に挟まれた葉緑細胞は小さな楕円形で、背腹ともに透明細胞と並んで外気に触れ、どちらかというと腹面の側に向かってやや広くなっている(p〜r)。それにしても、横断面の切り出しは意外と難しい。
茎の表皮細胞に螺旋状の肥厚がないから、オオミズゴケ節ではない。さらに、枝葉の先端は狭く鋭頭で、葉緑細胞は背腹両面とも表面に出ていて、横断面で腹側にやや拡がっている。全体に光沢もない。これらからスギバミズゴケ節 Sect. Acutifolia と考えるのが妥当だ。
[修正と補足:2008.12.07] |
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2個体から枝をすべて取り去り、茎葉を数十枚取り外してみた。いずれも、長さ0.9〜1.2mm、舌状で中ほどから先の透明細胞には膜壁はなく、扇状に広がり、総状に裂けている。茎葉基部には舷が大きく広がっているが、中部から上では舷は非常に細いか見当たらない(e〜h)。 茎の表皮細胞には1〜2個の孔をもったものがある(sd)。枝の表皮には首の短いレトルト細胞が2〜3列ある(si)。開出枝の葉背面の透明細胞には、貫通する大きな孔が見られる(sj, sk)。開出枝の葉腹面の透明細胞の孔は、背面の孔より大きいものが多い(sl, sm)。開出枝の葉の横断面で、葉緑細胞は背腹両面に開いているが、腹側により多く開く(sn, so)。 |
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