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[標本番号:No.261   採集日:2007/05/04   採集地:栃木県、那須塩原市]
[和名:ユミゴケ   学名:Dicranodontium denudatum]
 
2007年6月12日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先月の4日、栃木県の奥塩原温泉の標高600m付近の沢沿いで幾種類かのコケを採取した。その内のひとつを観察した。樹幹基部や落枝の表面にシッポゴケ科とフタマタゴケ科が競い合っていた(b)。シッポゴケ科の蘚類は、やや茶褐色を帯びたものと、黄緑色を帯びたものが混在していた。調べてみたのは茶褐色を帯びた方だ(c, d)。
 茎は高さ0.8〜1.5cm程度、茎の先端部がほとんど欠如し、周辺に落ちている(d)。さらに葉先の折れたものが多い(e)。葉はやや光沢があり、乾燥しても巻縮せず、弓形に反る(e, f)。葉は披針形で、長さ4〜6mm、太い中肋が先端まで達する(f)。葉基部では中肋が幅で1/3ほどを占め境界は不明瞭(g)、中程から先では中肋のみとなる。葉先の芒の部分には歯がある(h)。
 葉身細胞は、芒の部分では方形、葉の中央付近では幅8〜10μmほどで、長さには大きなバラツキがあり、方形〜矩形(h)。翼部は大きく薄膜の細胞からなり、茎に下延する(j, g)。葉の横断面をみると、ガイドセルを挟んで、葉の背腹両面にステライドがみられる(k, l)。葉の中程から先を一緒にして横断面を切ってみると、葉先では中肋のみからなることがわかる(k)。念のために茎の横断面をみたが、明瞭な中心束はみられなかった。

 葉や葉先が折れやすく、乾燥しても巻縮せず反り、太い中肋を持ち、葉の横断面で背腹両面にステライドがあることなどから、ユミゴケ属と判断した。観察結果から、ヘリトリシッポゴケではなく、ユミゴケ Dicranodontium denudatum だろう。以前観察したユミゴケは非典型的なものだったが(No.139No.102)、このユミゴケは比較的典型的な姿なのだろう。