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[標本番号:No.217   採集日:2007/05/04   採集地:栃木県、那須塩原市]
[和名:ヒメカモジゴケ   学名:Dicranum flagellare]
 
2007年6月13日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日観察したユミゴケ(a, b)の標本の中に、やや明るい色で、乾燥すると巻縮するタイプのコケが混じっていた(c, d)。同じ樹皮に混生していて、採取時には全く気づかなかった。ていねいにより分けて観察してみた。濡らして見ると、葉腋から小枝状のものがでている(e)。その部分を拡大してみるとどうやら、無性芽のようだ。長さは2〜3mmほどある。
 葉をはずしてみると、明らかにユミゴケとは違う。葉の中央部から先の細い部分をみると、中肋以外の葉身細胞が先端まで続いている。また、中肋とそれ以外の部分の境界も明瞭である(g)。茎は背丈1.2〜1.5cm、葉は溝状に内曲している(c)。葉は長さ2〜3mm、卵状披針形で、葉縁上部には微細な歯がある。葉の裏面や中肋の裏面には乳頭がある(h)。中肋は葉の基部で1/5〜1/6の幅を占め、背側に軽く膨らんでいる。
 葉身細胞は、不規則な方形〜矩形で、長さ10〜25μm、幅6〜10μm、細胞膜にくびれはみられない(i)。翼部は明瞭に分化し、大型で矩形の細胞からなる(j)。葉の下部、翼部のやや上で横断面を切ってみた。腹側のステライドがよく発達している。葉の各部の中肋断面をみた(k)。茎の横断面を中心束らしきものがある(l)。

 当初、No.217の標本は同一種だけであると思っていたが、2種が混在していたので、二つにわけ、無性芽を持った本標本をNo.217とし、混じっていたものを新たにNo.261として別標本とした。今日観察したものは、ヒメカモジゴケ Dicranum flagellare らしい。図鑑によれば、シッポゴケ属で小枝状の無性芽をもっていることが、ヒメカモジゴケを他の種と区別する大きな特徴とある。