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[標本番号:No.244 採集日:2007/06/02 採集地:栃木県、日光市] [和名:ミヤマギボウシゴケモドキ 学名:Anomodon abbreviatus] | |||||||||||||||||||
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月初、栃木県日光で行われた岡山コケの会関東の合宿で、印象的なコケにであった。大木の樹幹を覆うように群生しているコケだった(a〜c)。写真家の伊沢さんから指導を受けて、パンティストッキングで三脚を樹木に固定して撮影した(b, c)。樹木の胸高径は1mを越える。 現地では、キヌイトゴケ属 Anomodon だろうが詳細は顕微鏡観察が必要だ、といった話が交わされていた。この仲間は、以前奥日光の標高1,400m地点でエゾイトゴケ Anomodon rugelii に出会ったことがある(覚書2007.5.15:標本No.198)。 硬い感じの大型の蘚類で、一次茎は樹幹をはい、水平に斜上する二次茎は長さ4〜8cm、わずかに枝分かれする(b, c)。乾燥すると、葉は茎に密着するが、際だった巻縮などはせず(d)、水没させると直ちに葉が広がる(e)。持ち帰った標本には、枝の途中から短い朔柄をもった朔がいくつかついていた(f)。 葉は長さ2〜4mm、広い基部から舌状に伸び、葉頂は丸みを帯び、全縁で、中肋が葉頂近くまで達している(g, h)。葉身細胞は類円形で、径8〜12μm、背腹両面に牙状の大きな乳頭がひとつある(i, o)。葉の位置によっては、葉身細胞は20μmを越えるものもある。葉頂付近の葉身細胞もほぼ同じだが(j)、翼部の中肋近くには、長さ15〜25μm、厚膜矩形の乳頭を持たない平滑な細胞が並ぶ(k)。葉の中程で縁や折り目をみると、牙状乳頭が鮮やかに見える(l)。 複数箇所で葉の横断面を切りだしてみると、どの部分にも太く明瞭な中肋が通っている(m, n)。葉身部の断面に見える葉身細胞は、背腹両面に牙をもち、さながら恐竜の背骨のような印象を受ける(o)。 胞子体はかなり乾燥していて、水没させても朔柄はしおれたままで生状態には戻らなかった。柄の基部は小さく細めの苞葉に包まれ、朔には尖った蓋がある(p)。いずれの朔もかなり崩れていて、朔歯の様子は不明瞭だが(q)、先端は小さな乳頭に覆われている(r)。 観察結果は確かにキヌイトゴケ属を示唆している。外朔歯の乳頭は小さいからイワイトゴケ属のナガスジイトゴケは排除できる。葉の巻縮具合は以前観察したエゾイトゴケとは違う。属内の検索表で、エゾイトゴケとは別の枝をたどると、葉細胞に1個の牙状乳頭を持つものは、ミヤマギボウシゴケモドキが残った。似ているとされるキヌイトゴケとは葉の形や葉身細胞の牙状乳頭の形が異なる。種の記載を読むと、観察結果とほぼ一致する。朔は相称で、柄の長さも数ミリである。ミヤマギボウシゴケモドキ Anomodon abbreviatus としてよさそうだ。 |
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