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[標本番号:No.220 採集日:2007/05/04 採集地:栃木県、那須塩原市] [和名:クサゴケ 学名:Callicladium haldanianum] | |||||||||||||
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先月初め、いわゆるゴールデンウイークの時期に塩原温泉で採取したコケである。先月観察したのだが、その折りには全く手に負えず、そのままになっていた。いずれ分かるようになるだろうと考えていたが、今になっても属どころか、科レベルの判定もできなかった。 標高600m、陽当たりのよい沢の畔に転がっていた材の樹皮についていた(a)。全体に光沢があり、直立ないしやや傾いた朔をつけていた。茎ははい、不規則に枝をだし、乾燥しても葉は枝に接することなく、湿時とあまり変わらない(b)。茎や枝に毛葉などは見られない。 茎葉は長さ1.2〜1.5mm、枝葉は長さ1.0〜1.2mm、ともに卵状披針形で、先端は細く、全縁、中肋は無いか基部にごくわずか2本ある(c, d)。葉身細胞は茎葉でも枝葉でも、ともに線形で長さ70〜90μm、幅3〜5μm、平滑である(e)。葉先では幅広で短く(f)、翼部では大型楕円形〜矩形の薄膜の細胞が発達している(g)。葉の断面をみると、細胞壁は意外と厚い(h)。 枝と朔柄の断面を切って並べてみた。構造はよく似ていて、表皮細胞は厚膜で小さい。中心束はあるが弱い(i)。朔柄を包む苞葉は先端が長く糸状に伸びている(j)。朔柄は長さ2〜3cm、朔はやや傾いて、非相称(j)。朔歯と朔壁をみた(k)。内朔葉の表面には横に条線がつき、間毛の表面は小さなパピラに覆われている。朔壁は1層で、内側に袋状の膜を伴っている(k)。 朔には帽はすでに消失して、いずれも内外朔歯が露出していた。さらに、胞子はほとんど放出したあとだった。乾湿に応じて開き具合が変化する朔歯を楽しんだ(l)。
サナダゴケ科かナガハシゴケ科ではないかと考えたが、ナガハシゴケ科の可能性が高いと思うようになった。腋蘚類で中肋は不明か双生、無性芽や鞭枝はなく、翼部の細胞は少数で大きく、朔柄は平滑。葉先は鎌形にならず、葉縁は全縁、朔は直立〜やや傾き、非相称。
[修正と補足:2007.06.27 pm.5:10] |
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先入観を捨てて、標本を見直してみた。まったく偽毛葉の見られない個体が多かったが、いくつかの個体の茎に披針形の偽毛葉があった(m, n)。 あらためて、平凡社の図鑑の偽毛葉の説明を読むと、以下の様に書いてある。 蘚類の茎の表面を詳しく観察すると、将来枝になる原基を見ることがある。茎がはう種では、原基は茎の左右に規則的に配列することが多く、その周りには毛葉に似たものが見られることがある。これは原基のまわりだけにあるので、偽毛葉とよばれる。偽毛葉の有無や形は、シトネゴケ目の属や種を分ける重要な形質の一つである。 この文意を読み間違えていたようだ。太線(筆者)で記したように、「必ず偽毛葉がみられる」のではなく、「偽毛葉が見られることがある」のだ。したがって、偽毛葉をもたない個体もあることになる。また、偽毛葉が無いからクサゴケではない、といった論理はなりたたない。 しかし、それでは釈然としないので、偽毛葉をもつ個体を探した結果が、上記の写真(m, n)であった。この標本をクサゴケとしてみると、観察結果と図鑑の記述との大きなズレはなく、ほぼよさそうだ。ご指摘、ありがとうございます。 |
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