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[標本番号:No.282 採集日:2007/06/24 採集地:山梨県、鳴沢村] [和名:ナミガタチョウチンゴケ 学名:Plagiomnium confertidens] | |||||||||||||
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富士山から大型で綺麗なチョウチンゴケ形のコケを持ち帰ってきた(a, b)。ムツデチョウチンゴケをやや小形にしたような印象だ。やや薄暗い針葉樹林の林床に群生していた。 茎は立ち、高さ4〜7cm、上部に葉を密集させる。乾燥すると著しく巻縮する(c)。いったん乾燥したものを水没させたが、30分経過しても、まだ元の姿には戻らない(d)。茎は上部でかるく湾曲したものが多く、最上部の葉はやや小さく、茎の中ほどから下には、小さな葉が疎らにつく。 葉は、紡錘形〜舌形で、長さ7〜10mm、先端は軽く尖り(e)、葉面は波打ち、カバーグラスを乗せるとすぐに割れてしまう。基部は長く下延し(f)、葉縁には2〜3細胞列からなる舷を持ち、1〜2細胞からなる刺状の歯をつける(g)。葉身細胞は、空豆形〜丸みを帯びた多角形ないし矩形で、径15〜25μm、細胞膜は厚く、平滑である(h)。 中肋は背側に明瞭なステライドがあり、中心束のようなものがある(i, j)。中肋の縁は直ちに1細胞の葉身部となり、ムツデチョウチンゴケのような枝分かれはなく、中肋に沿った葉身細胞も、特に大型化することはない。茎の断面は3層からなり、褐色で太い中心束がある(k, l)。 一見するとムツデチョウチンゴケとよく似ているが、乾燥した状態では、ムツデチョウチンゴケは軽く葉が縮む程度なのに対して、この蘚類は葉が極端に強く巻き込む。また、中肋に沿った葉身部を見ると、ムツデチョウチンゴケでは分枝が見られるのに対して、この蘚ではそういったことはまるでない。両者の中肋断面を比べると、顕著な違いが見られる。茎の横断面もよく似ているが、ムツデチョウチンゴケでは明瞭に4層に分かれるのにたいし、この蘚類では3層(k)である。ナミガタチョウチンゴケ Plagiomnium confertidens に間違いなさそうだ。 |
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