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[標本番号:No.230 採集日:2007/05/08 採集地:栃木県、日光市] [和名:エゾハイゴケ 学名:Hypnum lindbergii] | |||||||||||||
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日光の標高400mあたりの涸れ沢で、落ち葉の中、土や石の上をツヤのある黄緑色のコケがはっていた(a, b)。湿っていても乾いていてもあまり姿は変わらない。偏平に葉をつけ、乾燥すると葉の反り方が強くなり、先端が下側に回り込む(b, c)。 茎は長さ8〜12cmになり、不規則に枝を出す。茎の表面には毛葉などはない(d)。茎葉は長さ2.5〜3mm、広卵形の基部からしだいに細くなり、わずかに鎌形に曲がる(e)。枝葉は長さ1.2〜2mm、卵形の基部から漸次細くなり、先端が曲がる(f)。茎葉も枝葉も、ともに葉先には微細な歯があり、中肋は不明瞭か、基部に短く2本わずかにみられる。 葉身細胞は、茎葉(g)も枝葉(i)も線形で、葉の中央部付近で長さ45〜90μm、葉先付近ではやや短く、葉基部では薄膜方形の細胞からなる。翼部には基部の他の細胞と似たような大きさと形の細胞が並ぶ(h, j)。茎や枝の横断面を見ると、表皮細胞は大型で薄膜であり、中心束の発達は悪い。葉身細胞の端が目立たない乳頭をもっているように見えるが(g, i)、葉の横断面をみる限り、ほとんど平滑といえる(l)。 乾燥すると葉の先端が強く鎌形に曲がるので、ハイゴケ科ではないかと思った。ただ、葉の付き方が偏平なので、サナダゴケ科やナガハシゴケ科の可能性も否定できない。いくつもの検索表をたどり、たどり着く属や、種の説明を読んでみると、ハイゴケ属 Hypnum のヒラハイゴケ(=タチヒラゴケモドキ) Hypnum erectiusculum が、観察結果と近いように思える。
[修正と補足:2007.08.21] |
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二次茎の葉(m)、枝葉(n)、枝葉の葉身細胞(o)、枝葉の翼部(p)、枝葉の横断面(q)、茎の横断面(r)をあらためてチェックした。pseudoparaphyllium (偽毛葉) の有無、形態は確認できなかった。これらをあらためて再検討しみると、先の観察時とは違ったものがいくつかみえてきた。 植物体は現地で偏平気味に感じたが、標本をみると、丸い感触のものが2/3〜3/4で、偏平気味のものが少数派だった。標本に複数種が混じっている可能性が全くないとは言いきれないので、同一個体の別の枝をいくつも確認した。同じ茎から出た枝に偏平気味に葉をつけたものとそうでないものが混在している。ただ、いずれも「偏平」性は弱い。 茎葉でも枝葉でも、多くは中肋がほとんど見られず、二叉する短い中肋を持った葉はそう多くはない。中肋をもった葉ばかりを何枚か、その横断面を切りだしてみると、いずれも2層の細胞からなる弱いものばかりだった(q)。葉の横断面の切り出しは、思いの外面倒だった。 昨日(8/20)にシメリゴケ属(8/21にエゾハイゴケと修正)としてアップしたものと共通する形質状態がかなりあるが、葉の付き方の密度、葉の大きさなどはかなり違う。しかし、ミクロの観察結果は非常に類似していると言わざるを得ない。 どちらかといえば、再度の観察からは、エゾハイゴケ Hypnum lindbergii に近いといえる。現在の知識・経験・力量からは、この蘚類がいったい何なのかを正確に同定することはできそうもない。しかし、少なくとも、ヒラハイゴケとするよりエゾハイゴケとする方が、確からしさが高いと思われる。ご指摘ありがとうございました。 |
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