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[標本番号:No.278 採集日:2007/06/24 採集地:山梨県、鳴沢村] [和名:オオシノブゴケ 学名:Thuidium tamariscinum] | |||||||||||||
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ぎっくり腰をやってしまい、きのこ観察に出られなくなってしまった。しばし安静にせざるを得ないので、皮肉なことに6月24日に富士山で採取したコケをようやく観察する時間ができた。 山梨県側、標高1,200〜1,300mの腐植土で何種類科のシノブゴケ科蘚類を採取した。今朝観察したのはそのうちの一つだ(a, b)。3回ほど羽状に同一平面上に分枝して、繊細で柔らかい感じを受けた。地上をはう茎は仮根をつけ、長いものでは、20cmに及び、階段状に新しい枝を伸ばしている(c)。太い茎や細い支茎、主枝に到るまで、その表面には無数の毛葉がみられる(d, e)。 茎葉は主茎と支茎とでは、大きさにかなりの相違があるが、いずれも広卵形〜三角形で、先端はやや尖るが透明尖とはならない(f, g)。太い茎の茎葉は長さ2〜3mm、支茎の小さな茎葉では長さ1〜1.2mm。葉縁はほぼ全縁で、中肋は太く先端近くに達する。 茎葉の葉身細胞は多角形〜矩形〜楕円形で、葉先では長さ10μm以下、茎葉の中央部では10〜20μm(i)、葉の基部では長い矩形となり、長さ40〜60μmに及び、厚い膜にはくびれがある(h)。葉の基部の大きな矩形の細胞はほぼ平滑だが、それ以外の大部分の細胞には、背面に一つの大きな乳頭がある(i)。 枝葉は茎葉と比較すると非常に小さいが、主枝か支枝かで大きさはかなり異なる。枝葉は卵状披針形で、中肋は先端にまではいたらず、各細胞には、それぞれ一つの鋭く大きな乳頭がある(j)。この乳頭のため、葉縁は歯があるようにみえる。 毛葉は1細胞列のものが多いが、数細胞幅のものもある。いずれも先端の細胞は先が尖る(k)。茎の横断面をみると、中心束はあまり発達していない(l)。 茎は表面が多くの毛葉に覆われ、2〜3回羽状に分枝し、葉身細胞には乳頭があることから、シノブゴケ属まではすぐにたどり着ける。属内の検索表をたどると、茎葉の先端が透明尖にならず、葉身細胞の乳頭が一つということから、オオシノブゴケ Thuidium tamariscinum に落ちる。種の記述を読むと、観察結果とほぼ一致する。雌苞葉などは観察しなかった。
[修正と補足:2007.08.12 pm.2:00] |
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主枝と支枝では、枝葉の大きさにかなりの差異がある。ここに追加した写真は、支枝先端の一部であり(o)、そこから葉を一枚取り外した(p)。枝葉の先端細胞が分かるように、その部分だけを撮影した。乳頭に合焦したもの(q)と細胞輪郭に合焦したもの(r)を並べた。 枝葉の葉身細胞には、背面に各々一つの鋭い乳頭があるが、先端の細胞は平滑で鋭頭となっている(q, r)。葉を横から見てもそれは読みとれる(s)。 なお、よく似ているとされるコバノエゾシノブゴケについても、枝葉の先端細胞が明瞭にわかるよう、新たに [修正と補足] を追加しておいた。両者の枝葉先端細胞の様子を比較できるだろう。 |
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