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[標本番号:No.324 採集日:2007/08/26 採集地:長野県、小海町] [和名:キヒシャクゴケ 学名:Scapania bolanderi] | |||||||||||||
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北八ヶ岳麦草峠のやや下に白駒の池がある。この周辺、標高2,000〜2,100mあたりで何種類かのこけを採取した。そのうちの一つの苔類を観察した(a, b)。シラビソを主体とした薄暗い針葉樹林下で、岩や腐植土からでていた。 茎は長さ3〜6cm、幅は葉を含めて3〜5mm、伏すように斜めに立ち上がり、基部でわずかに分枝する(b〜d)。葉は倒瓦状に重なり合ってつき、背片は腹片より小さく、長さで1/2〜3/5、背片も腹片もともに卵形で、先は鈍頭、縁は三角形の歯がある(f〜i)。 葉身細胞は楕円形で、葉の中央付近では、長さ15〜25μm、厚壁でトリゴンは大きく、平滑である(j)。類円形から楕円形で表面が粒状の油体が、1細胞あたり2〜5つほどある。短い枝の先についた組織は花被だろうか(e)。念のために茎の横断面も確認した(k)。葉腋部分には、鹿角状に不規則に分枝した小さな組織が見られる(l)。 葉が深く2裂し、倒瓦状に重なり合ってつき、背側の裂片が腹側のものより小さく、複葉がないことから、ヒシャクゴケ科ヒシャクゴケ属の苔類だろう。属の検索表をたどると、葉にキールがあり、葉身細胞は厚壁でトリゴンが大きく、葉縁の歯は三角形で、葉腋に鹿角状の付属物があることから、キヒシャクゴケ Scapania bolanderi に落ちる。種の解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。この苔に出会ったのは、6月24日の富士山(標高1,700m No.274)についで二度目となる。 |
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