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[標本番号:No.347 採集日:2007/10/10 採集地:岡山県、新見市] [和名:オオギボウシゴケモドキ 学名:Anomodon giraldii] | |||||||||||||
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先月鳥取から岡山理科大に向かう途中で、新見市の鍾乳洞近で、道脇の岩壁にでていた蘚を観察した(a, b)。一次茎は岩壁をはい、二次茎から斜上するように多くの枝を出す。枝は湾曲し、長さ1〜3cm、乾燥すると覆瓦状に茎に接し(c)、湿るとやや反曲する(d, e)。 枝葉は、長さ1.8〜2.3mm、卵形の基部から披針形に伸び、先端は軽く尖り、全縁で、太い中肋が葉頂近くまで伸び、葉基部の両端は細くなって下延する(f, g)。茎や枝に毛葉はない。持ち帰った標本では、ほとんどの茎葉が千切れていたので観察しなかった。 葉身細胞は、先端付近から葉の大部分では、不規則な多角形で、長さ8〜12μm、厚膜で表面に小さなパピラが4〜6個あり、細胞の輪郭は明瞭(h, i)。基部では長い矩形で、長さ30〜60μm、幅6〜10μm、細胞壁の縦膜が肥厚し、表面にはパピラはほとんどない(j)。 枝葉の中肋は、ステライドの発達は悪く、ガイドセルが目立ち、中肋背面には小さなパピラがある。葉の横断面を見ると、厚膜細胞と小さなパピラがよくわかる(k)。茎の横断面に中心束はなく、表皮は厚壁の小さな細胞から構成される(l)。 茎や枝には毛葉がなく、中肋が葉頂近くまで延び、葉身細胞にパピラがあるので、シノブゴケ科のキヌイトゴケ属 Anomodon だろうと見当をつけた。キヌイトゴケ属の種への検索表をたどると、オオギボウシゴケモドキ A. giraldii に落ちた。この種については、これまでにも三重県で採取したものを観察しているが(標本No.297)、その折りも今回の標本にも朔をつけたものはなかった。 |
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