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[標本番号:No.411 採集日:2008/04/12 採集地:栃木県、佐野市] [和名:チャボヒシャクゴケ 学名:Scapania stephanii] | |||||||||||||
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栃木県佐野市の川沿の林道で、濡れた岩壁に緑色のタイ類が一面についていた(a, b)。茎の長さは1.5〜2cm、わずかに分枝し、葉の背片が腹片の半分ほど。卵形で縁に微細な歯をもつ腹片は長さ0.7〜0.9mm、腹片の基部はやや流下し、キールは背片の1/3程度(c〜e)。葉身細胞は多角形で、長さ12〜18μm、トリゴンはほとんどなく、油体が各細胞に1〜4つほどある(f)。
上記の特徴から、先日観察したNo.413と同じくチャボヒシャクゴケだろうと思う。No.413とは10kmほど離れた全く別の場所で採取したものだ。原則として、同一日に採取した同一種はこの覚書にはアップしないのだが、No.413の覚書では朔については詳細に記したが、花被とカリプトラについてはあまり触れなかったので、以下にやや詳しく記すことにした。
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花被をつけた個体がいくつかあった(g)。花被の内側には短い柄をもった朔が入っていた(h)。花被から朔を取りだし(i, j)、次に花被を半分に切り開いて、カリプトラを表に出した(k)。カバーグラスを載せて顕微鏡下にもっていく途中で、カリプトラは崩れてしまった(l)。 花被は、扁平で長い台形状、口が広く切形で、縁には細かい歯がある(l)。カリプトラは、花被のすぐ内側基部につき、透明で三角フラスコ状の形をしている(k)。花被の細胞は多角形で、本体腹片の葉身細胞よりずっと大きく、長さ18〜30μm、円形の油体の数も一細胞あたり4〜8こほどある(m)。カリプトラの細胞はさらに大きく、長さ30〜50μmほどあり、葉緑体はほとんど含まず、油体の数もとても少ない(n)。 朔の外壁部分の細胞(o)、内壁部分の細胞(p)、弾糸と胞子(q, r)を参考のためにあわせて掲載しておいた。肉眼的観察結果や朔の壁、胞子、弾糸などは、先に観察したNo.413と同じで、あらためてコメントすることはない。 |
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