HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.428 採集日:2008/04/20 採集地:栃木県、鹿沼市] [和名:オオサナダゴケモドキ 学名:Plagiothecium euryphyllum] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
4月20日に栃木県鹿沼市で採取したコケの最後の1種を、今日やっと観察することができた。林道脇、標高240mあたり、日陰の急な腐植土面についていた蘚類を観察した(a, b)。ちょっとみたところ、同日に数百メートル離れた林道脇から採取したミヤマサナダゴケとよく似ているが、ルーペでみると何となく違っていた。整然と斜上している枝葉は今年出た若い植物体らしく、その基部には暗緑色の光沢のある茎葉がマット状に平らに広がっている(a)。 主に、立ち上がり朔をつけた個体を採取してきた(c)。乾燥するとやや縮れた(d)。茎ははい、不規則に分枝し、枝には扁平気味に葉をつける。枝は長さ1.5〜2cm、葉を含めた枝幅は3〜4mm。茎の腹側には仮根がつく(e)。葉は長さ2.5〜3mm、卵形〜卵状楕円形で、葉頂は広く尖り、ほぼ全縁(g)。葉基部はわずかに茎に下延する(f)。中肋は二叉し、葉長の1/3にまで達する。 葉身細胞は、葉頂付近では長楕円形〜紡錘形(h)、葉身部では線形で長さ10〜140μm、幅6〜8μm(i)、下延部の細胞は透明な矩形(j)。葉の基部で横断面を切ってみた(k)。茎の横断面をみると、表皮細胞は薄膜で、弱い中心束がみられる(l)。 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
朔柄は長さ3〜4cmで、傾いてつく(c)。僧坊形の帽、円錐形の蓋をもち(m)、朔歯は二列で、おのおの16枚からなる(n)。外朔歯表面は基部に横条があり、先の方は微イボに覆われる(o, p)。内朔歯は明瞭に観察できなかった。胞子は球形で、径9〜13μm。朔柄の横断面が美しい(r)。 ツヤのある葉が扁平気味につき、不規則に分枝し、二叉する短い中肋があり、茎の横断面で表皮細胞は薄膜、葉身細胞は線形、などからサナダゴケ属 Plagiothecium だと思う。平凡社図鑑で、種への検索表をたどると、オオサナダゴケモドキ P. euryphyllum におちる。種の解説をみると、葉腋に無性芽をもち、茎の横断面に中心束はない、と記されている。マット状に広く腐植土の上を這うように広がる植物体を採取しなかったことが悔やまれる。現時点では、とりあえずオオサナダゴケモドキとして取り扱っておく。 |
|||||||||||||