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[標本番号:No.447   採集日:2008/06/24   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:ホソホウオウゴケ   学名:Fissidens grandifrons]
 
2008年7月27日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 6月24日に奥多摩でフトリュウビゴケを採取した折り、すぐ脇の水流に濡れる石垣一帯から側溝にかけて、ホソホウオウゴケが群生していた(a, b)。ホソホウオウゴケには過去何度も出会っているが、久しぶりに再度観察するつもりで持ち帰っていた。
 類似の間違いやすいコケはないので、あらためて検鏡するまでもないが、せっかく持ち帰った標本(c)があるので、まずは水没させたのち(d)、数ヵ所で葉の横断面などを切り出した(e)。横断面をみる前に、葉身細胞を、葉の中央部(f)、先端付近(g)、基部付近(h)で確認した。葉身細胞は8〜15μmの多角形(f〜h)。中肋は葉頂近くに達する。
 葉の横断面は十数ヶ所で切り出したが、そのうちから3ヵ所の横断面を取り上げた(e, i〜k)。葉の上半部のまだ二裂していない部分では、外見からは明瞭な中肋が見分けられるが、横断面をみると、中肋部分は他の葉身部とは峻別できない(i)。葉が二裂して茎を抱きかかえるようになる部分も、腹翼の幅が次第に広くなっていくのがわかる(j, k)。茎の横断面に中心束はない。

 なお、同じ東京都奥多摩町でも、一昨年12月に採取(標本No.42)した場所と、今回標本(No.447)を採取した場所とでは、数十キロ隔たった全く別の沢の支流である。標本No.42を観察したときには、葉の上半部(背翼と腹翼に分離しない部分)の中肋の様子(i)を提示しなかった。