[標本番号:No.460 採集日:2008/06/24 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:ギンゴケ 学名:Bryum argenteum]
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2008年8月2日(土) |
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6月24日に採集したコケも残り5標本となった。今日はそのうちのひとつ、標高710m付近の湿った石灰岩壁を一面に覆っていたギンゴケのように見える白緑色の蘚類を観察した(a, b)。一部乾燥した部分では銀白色を帯びていた。
持ち帰った標本はすっかりカラカラに乾いて、灰白色となっていたが、湿らすと緑色が戻ってきた(c)。茎は長さ6〜10mm、葉を覆瓦状につけ、乾いても濡れても葉は展開しない。葉を取り外そうとルーペの下に置くと、多数の無性芽が転げだしてきた(d)。
葉は広卵形で深く凹み、長さ0.5〜0.8mm、葉頂は鈍く尖り、舷はなく全縁、中肋が葉長の2/3あたりまで達する。葉の中ほどから先は葉緑体をもたない細胞で占められ透明(e, f)。
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葉身細胞を3ヵ所で確認してみた。それぞれの場所での葉の横断面をあわせて表示した。それぞれ、葉の頂付近の透明細胞(g, h)、中央部からやや下の緑色部(i, j)、葉の基部付近(k, l)である。葉頂付近の横断面(h)をみると、中肋らしきものがある。ということは、平面を見たときの観察結果とは異なり、中肋が葉頂付近まで達しているということになる。葉身細胞の表面は平滑である。なお、葉身細胞のサイズや形についての記述は省略した。
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茎の横断面には中心束があり、表皮細胞はやや薄膜で、中心束を囲む細胞よりも小さい(m)。無性芽は花芽のような形をしていて(n)、押し潰してみると葉のような形が重なっている(o)。一部の茎には造卵器らしき組織がついている(p, q)。また、仮根の一部が球形に膨らんでいるのが目立った(r)。藍藻類のネンジュモ属が、まるで無性芽のように、無数に付着していた。
ギンゴケ Bryum argenteum としたが、以前観察したもの(標本No.19)と比較すると、違和感が残る。本標本がギンゴケだとすると、典型的なものからはかなり外れているように思う。図鑑などでは、「(葉の)先端は(急に)短く尖る」とある。しかし、本標本では、そういった葉はなく、どの葉でも鈍く尖るものばかりだ。また、ルーペや実体鏡で見る限り、中肋は先端近くには達していない。ただ、先端付近で葉の横断面を切ると中肋の証拠らしき構造が見られる(h)。また、非常に多くの無性芽をつけていることもあげられる。
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