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[標本番号:No.498 採集日:2008/08/09 採集地:栃木県、那須町] [和名:コスギゴケ 学名:Pogonatum inflexum] | |||||||||||||
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栃木県の那須連峰、標高1,700mあたりの陽当たりのよい稜線で、縦走路途中の岩の隙間にスギゴケの仲間が出ていた(a, b)。枝分かれはほとんどなく、茎は長さ2.5〜3cm、上半部に密集して葉をつけ、乾燥すると葉が強く巻縮する(c)。 葉は、長さ4.5〜6mm、卵状の鞘部から線状披針形に伸び、葉頂は尖り、葉縁には歯があり、中肋が葉先に達する(d)。湿った状態で撮影した葉を1時間ほど放置しておいたら、巻縮してバネのような姿になってしまった(e)。なお、鞘部は透明で、縁は全縁(f)。 葉の薄板はほぼ全面を被い、これを表側上部からみると、横長の楕円形が密に並ぶ(g)。透明な翼部の細胞は矩形で厚い膜を持っている(h)。葉の横断面をみると、腹側のほぼ全面に、高さ4〜5細胞の薄板が見られる(i)。薄板の頂端細胞は横断面で、上面は軽く起伏があるがほぼ平らで、微細なイボがみられる(j)。薄板を横からみると、上面はやや凸状に並ぶ(k)。茎の横断面には中心束がよく発達している(l)。 葉縁に鋸歯があり、乾くと強く巻縮し、薄板の頂端細胞は単生で、凹凸があり目立った乳頭はなく、葉縁は一細胞層からなること、などからコスギゴケ Pogonatum inflexum だろう。以前日光の標高1,300m付近でコスギゴケを見ているが(標本No.284)、まさか標高1,700mの陽当たりのよい岩稜の岩陰にも生育するとは思ってもいなかった。 |
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