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[標本番号:No.504 採集日:2008/08/31 採集地:秋田県、由利本荘市] [和名:タカネカモジゴケ 学名:Dicranum viride var. hakkodense] | |||||||||||||
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去る8月末、秋田市で行われた蘚苔類学会の大会のあと、鳥海山北面の高原で、池の周囲を散策した(alt 1070m)。濃緑色の蘚類が、池畔の古い木製テーブル一面に丸いかたまり状の群落を作っていた(a〜c)。 朔をつけた個体はなく、茎は直立し、高さ15〜20mm、基部でわずかに分枝する。湿っていても乾燥しても、姿はほとんど変わらず、葉はとても脆くややかたい感触で、大部分の葉では、先が折れ失われている(d, e)。 葉は狭い披針形で全縁、長さ3〜4mm、上部は凹状に窪み、芒となって伸びる。中肋は基部では葉幅の1/3近くを占め、上部ではほとんど中肋だけになり、芒となって長く突出する。ただ、先端まで完全に繋がった葉は少なく、芒の先には歯がある(f〜h)。 葉身細胞は、丸味を帯びた矩形で、厚壁、葉の中部では、長さ15〜25μm、葉の中程から下では、長さ15〜35μm(i)。翼部には、茶褐色で矩形の大きな薄膜の細胞が並ぶ(j)。茎の横断面には、弱い中心束がある(k)。葉の各部で横断面を切り出してみた(l〜r)。 |
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中肋には背腹両面にステライドがあり、翼部の葉身細胞は薄膜で1層、葉の中部から上部では、葉身細胞と中肋との境界は不明となり、横断面全体が凹状となっている。 シッポゴケ科 Dicranaceae には間違いなさそうだ。朔をつけたものがみあたらなかったが、平凡社図鑑の検索表をたどると、ユミゴケ属 Dicranodontium とシッポゴケ属 Dicranum が残る。しかし、ユミゴケ属として掲載された種の解説を読むと、観察結果とは何となくしっくりしない。シッポゴケ属の検索表をたどると、タカネカモジゴケ D. viride var. hakkodense だけが候補に残った。図鑑の解説は、観察結果とほぼ近い。朔が相称で直立するのか、非相称で傾くのかは確認できないが、以前観察したタカネカモジゴケ(標本No.487)と比較すると、非常によく似ている。 |
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