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[標本番号:No.559 採集日:2008/10/11 採集地:長野県、山ノ内町] [和名:ホソバミズゴケ 学名:Sphagnum girgensohnii] | |||||||||||||
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10月11日に志賀高原の小湿原(alt 1800m)で採集したミズゴケのうち最後のひとつを観察した。オオミズゴケに混じって群生していたものだ(a)。植物体は淡黄緑色で頭部はわずかに橙色を帯びている。下垂枝は開出枝より細くやや長い(c)。茎葉と枝葉は同じような長さ(d)。 茎は淡緑色で下部は紅色を帯び、長さ6〜12cm、枝を比較的疎につける(b)。茎の表皮細胞は、矩形で上端に0〜1個の孔があり、横断面で表皮細胞は2〜3層をなし木質部との境界は明瞭(e, f)。枝のレトルト細胞は2〜3列あり、首は短い(g, h)。 茎葉は舌形で、長さ1.0〜1.3mm、葉頂はおおむね丸みを帯び、葉先部分の透明細胞には膜壁がなく貫通している(i〜k, m)。葉の中央下部では薄い膜がある(l, n)。葉縁には舷があり、上半部では幅狭く、下部〜基部では葉幅の2/5ほどまで広がっている(j)。 |
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開出枝の葉は卵状披針形で、長さ1.2〜1.5mm、上半が弱く反曲する(o)。下垂枝の葉は枝に密着してつき、披針形で、長さ0.8〜1.4mm(p)。枝葉背面の透明細胞には半月形〜楕円形の貫通する孔が縁に沿って並ぶ。開出枝の葉でよりも、下垂枝の葉でこの傾向はより顕著となる(q, r; u, v)。開出枝の葉腹面の透明細胞には孔は比較的少ないが(s, t)、下垂枝の葉腹面の透明細胞では比較的多い(w, x)。しかし、下垂枝の葉背面透明細胞の孔と比較すると圧倒的に少ない。 |
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枝葉の横断面で、葉緑細胞は台形〜二等辺三角形で、背腹両面に開いているが、腹側により広く開いている(y〜ab)。
茎や枝の表皮細胞に螺旋状の肥厚がなく、枝葉の横断面で葉緑細胞が表にでていることから、ミズゴケ節 Sect. Sphagnum キレハミズゴケ節 Sect. Insulosa キダチミズゴケ節 Sect. Rigida ではない。さらに、茎葉は枝葉と比較してさほど大きくなく、舷が下部で広がることからウロコミズゴケ節 Sect. Squarrosa ではない。また、枝葉の横断面で葉緑細胞が腹側により広く開くことからハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata でもない。 本標本の検討にあたり、ユガミミズゴケ節の特徴を再確認した結果、[修正と補足:2007.09.03]でユガミミズゴケとした標本No.285は、スギバミズゴケ節の蘚であることがはっきりした。この標本No.285にも、二度目の「修正と補足」を加えて誤りを修正した。 |
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