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[標本番号:No.597 採集日:2009/03/08 採集地:栃木県、栃木市] [和名:チャボシノブゴケ 学名:Pelekium versicolor] | |||||||||||||
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今月8日、栃木県の名刹出流山満願寺に行った。奥の院に向かう参道脇の石灰岩にシノブゴケ属のコケが多数ついていた(c, d)。植物体はとても小さく繊細で、岩を這う茎は、長さ6〜10cm、数回羽状に分枝し、各枝は葉を含めた幅0.2〜0.3mm(e)。 茎の表面は無数の毛葉に覆われるが(f)、枝や小枝の表面には毛葉はほとんど、あるいは全くみられない(o)。茎葉は三角形で、長さ0.3〜0.4mm、先端は細く尖るが毛状とはならず、中肋が葉先近くに達する。枝葉は広卵形で、長さ0.1〜0.2mm、葉先は鈍く尖り、中肋が葉長の2/3に達する(g, h)。 茎葉も枝葉も、葉身細胞はほぼ同様で、丸みを帯びた多角形で、長さ6〜10μm、中央に一つの乳頭がある。一部の乳頭では、先が二つに枝分かれする(i〜l)。葉の横断面や縦断面をみると乳頭の様子はさらに明瞭になる(m, n)。 |
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茎の横断面に中心束はない(p)。茎や太い枝基部の毛葉は一細胞列のものやら、小さな葉型のものがあり、細胞の境界部には乳頭が出ている(q, r)。 シノブゴケ属 Thuidium の蘚類に間違いなさそうだ。保育社図鑑で属から種への検索表をたどると、すなおにチャボシノブゴケ T. sparisifolium に落ちる。種の解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。なお、保育社図鑑では学名に T. bipinnatulum をあてているが、標本No.179と同様、平凡社図鑑に準拠した。
[修正と補足:2010.03.01] |
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