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[標本番号:No.600 採集日:2009/03/08 採集地:栃木県、栃木市] [和名:マツムラゴケ 学名:Duthiella speciosissima] | |||||||||||||
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栃木市星野にある御嶽山(alt 200m)の登山口には石灰岩を主体とした砂利が敷かれている。その脇の石ころだらけの斜面に大形の整った蘚類が群落を作っていた(b)。一次茎は匍い、二次茎は斜上して、不規則羽状に枝分かれし、葉を扁平気味に密につける。一次茎は長いものでは20cmを超えていた。乾湿で姿はほとんど変わらない(c, d)。 ルーペで見ると、葉先は波打ち、葉縁には全周にわたって明瞭な鋸歯がある(e, g)。茎葉は卵形で次第に細くなり先端は尖り、長さ3〜4mm、葉縁には鋸歯があり、葉先は激しく波打つ(f, h, i)。茎葉の基部は小さな耳型となり、翼部が明瞭に分化する。中肋は先端に達しない。 茎葉の葉身細胞は、狭い六角形〜線形、葉の中央部で長さ20〜30μm、幅5〜8μm、薄膜で表面中央部にひとつの乳頭がある(j, k)。葉先ではやや幅広で短く、乳頭のない細胞もあり(l)、葉縁の鋸歯は一細胞からなり(m)、翼部には矩形でやや厚膜の大形細胞が並び(n)、翼部に続く基部の細胞は長さ30〜50μm、壁はやや厚膜でくびれがある(o)。葉の横断面で、中肋にはステライドはなく(p)、葉面の突起は背腹両面にある(q)。 |
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枝葉は、長さ2〜4mm、全体の形、葉先が波打つこと、葉縁には全周にわたって鋸歯があること、中肋の様子など、茎葉のそれとほぼ同じ(r)。葉身細胞も茎葉とほとんど変わらない(s〜w)。茎や枝の横断面には中心束があり、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(x)。
一次茎は匍い、二次茎は斜上し不規則に分枝し、密に葉をつけ、葉縁には全周にわたって密に歯があり、中肋は一本で長く、葉身細胞は細長で乳頭をもつこと、茎に中心束をもつ、などからムジナゴケ科 Trachypodaceae に間違いなかろう。
保育社図鑑で属への検索表をたどると、ノコギリゴケ属 Duthiella に落ちる。次いでノコギリゴケ属から種への検索表をたどると、観察結果はマツムラゴケ D. speciosissima を示唆している。種の解説を読むと、ほぼ観察結果と一致する。図鑑には、「雌雄異株。朔はまれ」とある。 |
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